鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ19)

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翌日私達は、それぞれ早朝から動き出した。
優衣は恵里サンの眠る病院に。
真司は清明院大学に。

私はと言えば…特定の場所へ向かうことは出来なかった。何処にいるかなんて検討もつかないため、バイクで移動可能な範囲を虱潰しに探すしかなかったのだ。
今日の朝、花鶏に置いてあった蓮のバイクは消えていたから、私達が眠っている間に帰ってきたのだろう。徒歩で移動してくれていれば探すのも楽だろうに、緊急事態でもよく頭が回るものだ。

ダークウイングの気配が辿れれば良いのだが、近くに居ないのか戦っていないのか、未だ蓮に近付くことは出来ていない。

手遅れになる前に見つけなければ。
そんな焦りが募る脳内に、突如飛び込んできた水音。一度脳内を整理しようと、とある公園の横にバイクを止めた時だった。

『＿＿蓮、』

その先に、彼が居たのだ。
公園の水道に倒れ込むように体を預けて、口元へ水を運ぶ彼が居た。

弾かれたようにバイクを降り、蓮の元へと駆け寄る。目的を果たすためだ。触れた手から力を送り込んで、彼の傷を治していく。
鬱陶しそうに私の手を払おうとしたが、その力もなかったのか、蓮は直ぐに大人しくなった。

傷の重さは勿論だが、何より昨夜、彼は休むこと無く戦う相手を探していたのだろう。
その目は戦いを求めて迸っているのに、彼自身をじっと見詰めてみれば、何処か悄然として見えたのだ。

ちゃんと眠ったのかとか、食事を取ったのかとか、聞きたいことは山程あった。けれど何も言ってはならない気がして、只管力を送り続ける。
そうして、目に見える限りの傷が、ようやっと消えた時。

ーキィィン…

聞こえた音に、二人揃って顔を上げた。