鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ16)

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花鶏に戻り、現在我々が居るのは真司と蓮の部屋。電気は付けず…というより、付ける気も起きず。カーテンも閉ざされ、部屋は薄暗いままである。
幸いなことに、私たちを追い出した張本人である叔母サンは、どうやら出かけているらしかった。

「恵里さんの病院…行ってきた」

蓮の戦う意味を探るため足を運んだのは、彼の恋人…恵里サンが眠る病院。とはいえ実際向かったのは、優衣が一人だけである。
真司は怪我は治ったものの歩くのが辛い程のダメージを引きずっていて、私は真司が負った怪我の治療によって体調面が不安になったからだ。昨日泣いたことで元々体調が優れていなかったこともあり、常時立ちくらみに襲われているような状態となったのである。

「恵里さん…あと数日しか持たないだろう、って……だから蓮は、真司君と戦ったんだね」

恵里さんを助けるためには、最後の一人になるしかないから。
優衣が告げた言葉は、ライダーバトルに身を投じる人間として至極当然のモノだった。最後に生き残った人間が得られる力…ソレに賭けるしかない人間が、デッキを手に取るのだ。しかしソレは、ぬるま湯に浸っていたせいで、忘れていたモノでもある。

「……でも無理だよ…！…ライダーはまだ何人も居るし…間に合うわけ無い…！」
『…蓮だって分かってるよ』
「……ッだったら…！だったら止めようよ…！このまま戦い続けたって…」

耐えられないとばかりに声が小さくなって、その先の言葉が紡がれることは無かった。
出来るワケが無い。それなのに、無理をしてまで戦いを続ける。その先に死が待っている事実は、いとも簡単に想像がつく。

「アイツは……止められないよ」

このまま無謀な戦いを続けたって、犬死にするのが関の山。

「蓮は…きっと最後の瞬間まで戦いを止めない。例え無駄でも…自分が、死ぬとしても」

それでも蓮は止まらないのだ。
止まることが出来ない。
止まって、生き延びたとしても。その先に待つ生は、死よりも辛いものになるだろうから。