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戦いの場は矢張り、遊園地から離れた場所だった。
今私が居るのは、遊園地から程なくして辿り着いた公園。ライダー達の姿は見えないが、微かに聞こえる音や感じられる気配から、先程よりは近付けているハズだ。
「真司君…蓮…！」
隣で苦しげな声を漏らしたのは、先程合流したばかりの優衣。戦いが行われていることに気付いて連絡し、共にミラーワールドの音を辿っていたのである。
聞こえる、衝撃音や呻き声…それらが織り成す戦いの音に、彼女は必死に耳を塞いだ。
『いいよ、優衣。ここに居て』
「お姉ちゃん…」
『大丈夫だから』
雨足は再び強まってきた。公園の芝生、その中央に佇む大木の下に、優衣を導く。
ライダー同士が本気で戦えば、無論、彼らは無事では済まない。目を逸らしたくなるような怪我を携え、現実世界に戻ってくるのだ。
甘ったるい考えかもしれないが、できることなら、その様は優衣に見せたくなかった。きっと、自らを酷く責めるから。
鉛が溶け込んだような胸中で、先程音が聞こえていた方向へ足を踏み込み、ソレを辿ろうと意識を集中させた時。
『……真司、』
目の前に、探していた内の、一人の姿が見えたのだ。
『真司ッ！』
背中を丸め、重い一歩を辛そうに踏み出す彼。手や額、口の端から血を流し、虚ろな目で歩いてくる彼は、立っているのが不思議なくらいであった。
支えようと手を伸ばせば、それが間に合う前に、彼の体は芝生の上に投げ出される。
「真司君ッ！」
背後から飛んでくる優衣の声。ソレを聞きながら、私は必死に真司に力を送り込んだ。目に見える傷は次第に治ってゆくが…彼の苦悶の表情は和らぐことがない。
目で見るより何より、内部の損傷が激しいのだろう。何度もライダーが傷付く様を見て、何度もソレを治してきた。けれど、こんなにも酷い状態は、一体これまで如何程あっただろうか。少なくとも、真司がこんな怪我を負った様を、私は見た事がない。
「蓮…」
『……！』
息も絶え絶えの彼が紡いだのは、先程戦っていたであろう相手の名前だった。
その姿は、近くに無い。きっと、真司と同じく現実世界に戻ってから、行先を異にしたのだろう。
その事実は、モンスターと戦ったのではなく、彼らが彼らの意思で刃を交えたのだと、告げているも同然だった。
「蓮…」
雨音に掻き消される程、小さく掠れたその声。
込められた感情は、背中に伸し掛るように重たいものだった。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年4月26日 18時
