鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ14)

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『真司……蓮……』

現在私は、消えた二人を探して走り回っていた。

雨が降ってきたこともあり、見える人影はまばらになっている。多くが帰宅を選んだか、室内に移動したのだろう。
しかし必死に駆けずり回っている今、人目を気にしなくていいという面で、雨はプラスの方向へ作用していた。前髪から水が滴り落ちるけれど、そのくらいはさして気にならない。

現在、優衣とは別行動を取っている。
不安もあったけれど、連絡手段は確保されているし、何より手分けして探した方が早く見つかると思ったから。

そうして、メリーゴーランドとは大きく離れた、園の端っこに位置する辺り。
今はもう使われていないらしい通路の、ガラス製の壁と天井。ドーム型のソレから、微かに漏れ出る音があったのだ。

キィン、ガキィン、と。
武器と武器とが火花を散らすその音は、平和な日常を生きる上で聞くことがないモノ。
ライダーである二人は、今、ミラーワールドにいる。その結論には、持ち得る情報と今までの経験から、あっという間に辿り着くことが出来た。しかし分からないのは、何故彼らがミラーワールドにいるのかということ。

モンスターの気配はしなかったのだ。人を襲うことを目論むモンスターの気配があれば、メリーゴーランドに乗っていようが何だろうが、私は即座に気付くハズである。
だのに、そんな気配は一切なかった。モンスターの到来を告げる音も聞こえなかった。限界まで集中して、なんとか感じられる気配は、彼らにそれぞれ付き従う、ドラグレッターとダークウイングのみだったのだ。

とあれば、彼らは。

『……！』

遠くへ離れてしまったのだろう。今この場では、金属が激しくぶつかり合う音以外に、ミラーワールドでの戦いを示す証拠は無い。どれだけ目を凝らしても、ライダーの姿は見えないのだ。

それでも、彼らの現状は理解出来た。
その戦いに至るまでの葛藤と、戦うことを決めた彼らの覚悟も、痛いくらいに。