鶴は幸せを運ぶのか Ⅷ (ページ46)

今日:6 hit、昨日:25 hit、合計:6,780 hit

352 ページ46

「フッ、」
『やめろ笑うなつられる』
「何がおかしいんだよ！いい話じゃないかほんとに…！」
『お前もやめろ』

話が終わるなり、我慢ならんとばかりに吹き出す蓮に、小さな怒りすら覚える。
何を堂々と笑ってくれるんだコイツは。私はこの手の話を聞くの二回目なんだぞ。一回目も今回も必死で耐えているのに何簡単に笑ってくれるんだ私の努力を水の泡にする気か。

「ホントなの？その話」
「勿論です！あの時の火傷の跡が、私の指にはまだ残っています！」
「どこ？」
「ホラ、ココ。よく見ないと分からないかもしれないけど…」

今回の話も常軌を逸していて面白かった。
笑っていいというなら思う存分楽しめるのに。最大限の拍手を送るのに。
"笑ってはいけない"という年末の特番の如く状況が、この話を心から楽しむことを制止してくる。

過去の北岡サン(仮)は丸い食べ物を指輪代わりにするのがノルマなのか？多分たこ焼きより突き刺す難易度は高いし、冬場の冷えも相まって煮卵はアッツアツだぞ。そりゃ火傷もするわ。暖める(物理)じゃないんだよ。
それにダイヤモンドのような輝きはラーメンの油だぞそれでいいのか。あと指輪において"栄養がある"はプラスポイントじゃないからな二回目だけど。

マァ、蓮を呼んだのは正解だったかもしれない。彼が居るおかげで、自分の反応が正しいと自信を持つことが出来た。やっぱり不思議に思う…なんなら笑いが零れるのが正しい反応なのだ。自分とめぐみサンの他に真司しか居なかったら、いずれ自分の常識も塗り替えそうである。

令子サンがどう転ぶかは分からないが…話の正誤を聞いたということはおかしいと思っているのだろう。
ならば令子サンも信じないハズ。ならば、真司がこれ以上暴走して、更なる波紋を産むことは無い。

この時、密かに私は胸中で、胸を撫で下ろしていたのだった。