鶴は幸せを運ぶのか Ⅷ (ページ37)

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「それもこれも、城戸君の早とちりのせいだなぁ。…お前のおかげで話がややこしくなったんだ」
「何だよ！アンタだって俺の作戦に乗ったクセに！」

北岡サンがさらに乗せてくれた大きな海老を頬張れば、スパイシーな甘さが口内を埋め尽くす。流石評判の良いお店だ。どれを食べてもハズレ無く美味い。

「嗚呼、俺は何でもするぜ？Aちゃんのためならなぁ」
「アッ！」
「ちょっと！」
「Aちゃん、肉食べる？」
『…マァ、頂きます、』

真司と令子サンの視線が痛い。後蓮の視線も少しばかり痛い。島田サンの視線は料理にしか注がれていないため痛みも何も感じない。良いことだ。
だがマァ、美味しいお肉に罪は無いので、有難く頂いておくことにする。

「昨日見た雰囲気の違うAちゃんも良いけど…やっぱりいつものスタイルが一番だね」
『今日…スーツじゃないんですけど』
「違う違う。AちゃんがAちゃんらしく、自分の好きな格好してる時が一番だって言ってるの」
『…どうも…』

今日の髪は、普段と変わらず白混じりの黒。
今日の化粧は、真っ赤なリップにはね上げたアイラインがポイントの勝気な印象の仕上がり。
今日はオフなので、アンティークなジーンズにバックルのゴツいベルト、上はシンプルな白のTシャツだ。耳にはターコイズの大ぶりなピアスが揺れて、ハイヒールはブルーの八センチである。

自分では、いつもとは違う服装だと思っていた。だが他人の目…少なくとも北岡サンの目には、コレが私らしく映るのか。
驚き半分喜び半分だ。
芯がブレていない、なんて褒められた気分。

「俺は絶対許さないからな！アンタとAちゃんなんて！」
「お前は関係ないだろ？引っ込んでろよ」
「お前こそ引っ込んでろよ！」
「よせ」
『犬と飼い主か？』
「「誰が」」
『お前らだわ』

多少の口論はありながらも、皆、食事の手は止まらない。みるみるうちに量を減らす大皿は見ていて心地が良いものだ。

大勢で囲む食卓は良いものだな、と。
当たり前のことを、ヤケにしみじみ考えた。