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麗らかという言葉がよく似合う午後。暇を持て余していた私は、目に付いた喫茶店へ入った。
カウンター端の席に座り、コーヒーを頼んで待っていると。後ろから、掛かった声。
「隣、いいか？」
それは落ち着いた男のものだった。
他にもいくつか空いている席はあっただろうに、と不思議に思いながらも、拒否する理由もないのでどうぞと返す。
「ありがとう」
椅子を引いて隣に座ったのは、赤いジャケットが目を引く青年だった。
彼はコーヒーをカフェイン抜きで頼んで、それから一息ついて私を見る。一瞬、出処の分からない不安が、私を襲った。
「ここにはよく来るのか？」
『…いや、今日は偶然』
「そうか」
『貴方は？』
「俺も偶然、だ。運命だな」
『…ナンパなら、他を当たってください』
突然甘くなった声音。雲行きが怪しくなったのを感じてそう告げると、彼は手厳しいな、と笑った。
懲りた様子は無い。その証拠に、彼は会話を続ける。
「この前占いで、運命の相手に出会うと出た」
『占い？』
「嗚呼。俺の占いは当たる」
言いながら、彼が取り出したなんの変哲もないコイン。
それを親指に乗せて弾き、片手でキャッチする。ゆっくり開かられた手のひらには、表を示すコインがあった。
彼は数秒ソレを見つめて、ゆっくりと口を開いて。
「お前の運命を握っている男。お前が必死に焦がれている男。…再会が、近付いている」
『…！』
私の運命を握っている、私が焦がれている男。その言葉で思い出すのは、兄さんの姿。
この半年、私が翻弄され、会うことを待ち侘びている人。
再会が、近付いている…？
「そんなに大切か？妬けるな」
『…そんな相手じゃない。兄だから』
数秒、動きが止まった。いつの間にかコインを仕舞ったらしい彼は、笑いながらこちらを見る。
その笑みにまた不安を煽られ、最初に感じた"出処の分からない不安"に合点がいった。彼の笑みには、全てを見透かされるような雰囲気があるのだ。
自分にすら隠している心の奥深くの何かを、見透かされるという恐怖。
「お待たせ致しました、コーヒーです」
『…ありがとうございます』
熱いコーヒーを、火傷も気にせずに飲み込む。舌と喉にちりちりという感覚があるが、今はそれ以上に、この場から逃げたかった。
「必ず、再び会うことになる」
『また、占い？』
「…俺の占いは当たる」
席を立って会計に向かえば、後ろから掛けられた声。
迫り上がる言いようもない恐怖に、急かされるように喫茶店を出た。
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みーちゃん - 龍騎本当大好きなので本編沿いの小説がでてくれてうれしいです！これからも頑張ってください！応援してます！小説を書いていないので大変さは分かりませんがファイトです！ (2022年10月25日 19時) (
レス) id: ee873f9c2a (このIDを非表示/違反報告)
ますこ - 龍騎、大好きなので楽しんで読ませて頂いてます！これからの更新も楽しみにしてます！ (2022年10月17日 20時) (レス) id: 0698efded3 (このIDを非表示/違反報告)
okaka - 今、ちょうど龍騎を見ているのでとても楽しく読んでいます。この作品でとても癒されています！大好きです！！ (2022年10月16日 21時) (レス) id: 87b1e34c00 (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 好きすぎて一気見しちゃいました…ほんとに大好きな作品です；；これからも応援してます…！ (2022年10月16日 5時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年10月9日 22時
