二十一匹 ページ25
NO side
『あ……』
新美がぼそりと呟くのを同時に国木田が言葉を切った
天井を見上げ、目をこすりながらこう云った
「む……?何だ、急に照明の具合が悪く…」
谷崎と新美はつられて照明を見上げたが、蛍光灯には何の異常もない
その時点で何かを察したように新美は苦笑いをした
「それは私の合図さ〜♪」
喫茶店の入口で、調子外れに唄う声がした
「うわあああ!」
国木田の椅子ががたがたと騒々しい音を立てた
『……大丈夫?』
入口に立っていたのは、長身の青年だった
砂色の
ひょろりとした痩軀が入口を背負っている
右手には紙袋を提げていた
彼の名は太宰治
この三人と同じく武装探偵社の社員である
「先輩こんばんは。いやあ、いつ聞いても国木田君の悲鳴は素敵だねぇ。その反応、寿命が縮まっていくのが肉眼で見えるかのようだよ。あ、おばちゃんいつもの紅茶ね」
『性格の悪さが滲み出てるね…』
店の奥から中年の女性店主が顔を出し、あら太宰ちゃん、今日もいい男だねえと声を掛けた。
太宰はおばちゃんもいい女だよと云いながら手をひらひらと振り、国木田の隣の席に着席した。
新美の発言は気にしてないようである
太宰が来たことによりただでさえ狭い席がさらに狭くなった
「太宰……お前、何しに来た」
国木田が天敵を威嚇する手負いの獣のような低い声で訊ねた
『本当にね、話し合いに参加するような人だっけ?君』
仕事から逃げるくらいだものね、と新美は呆れた顔で云った
「え?それは勿論____」
少し含み笑いで太宰はこう云った
「国木田君の寿命を軽く縮めに」
否、云い終わらないうちに、太宰は首を絞められてわしわしと揺すられた
「お前はっ!どれだけ俺に苦労を掛ければっ!気がっ!俺がっ!どれだけっ!」
「うへはははは」
太宰は揺すられながら笑っている
「ま__まあまあお二人とも。店内ですから」
『ほらほら〜落ち着きなよ』
谷崎はまじめに云っているが、新美は少し笑いが込められていた
こいつら大丈夫なのだろうかと、谷崎の頭に浮かんだ
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強いうさぎLv3 - 新美南吉…!!地元…!!(嬉しい) (2019年6月14日 20時) (レス) id: 1eba992f2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:百合 | 作成日時:2018年8月5日 19時