狗巻先輩……弟居たんっすか？

肆 ページ7

待っていると、入ってきたのは小脇にヌイグルミを抱えた夜蛾だった

「…………」

初見の呀は、ジーッと見つめるしかできない

夜蛾も、ジーッと見つめ返す
「噂通りだな」

それは、呀の右手と右目下の赤い印を見てからの答えだった

「入学試験だ。これを倒したら、入学許可を出す」

夜蛾は、唐突に小脇に抱えていたヌイグルミを放った

それは、いきなり呀に飛びかかってきた

「うわっ！！」

呀は、尻もちをつきながら後ろに逃げる

ヌイグルミは、ケラケラ笑いながら襲いかかってくる

呀は、走りながら避け、ヌイグルミの勢いを利用して避けたりする

運動神経は、文句なし
判断力も、文句なし

けれど、勇気が足りない

右手はと言うと、何にも触れないように注意している

それが枷になって、避けれそうな攻撃に当たったりしている

右手で触れてしまえば、ヌイグルミなど小虫も同様であろう

でも、触れない

呀の表情には焦りがでてきた

「この程度の坊主だったとはな」

夜蛾は、ヌイグルミに送っている呪力を止めようとする







「まだです！！待ってください！！」








その瞬間、呀の声が響き渡った

「右手を使えば、俺はただの弱い奴です！！」

夜蛾の動きがピタリと止まった

その言葉に、同席していた五条と棘までもが目を見張る

「人の命を奪えるような力で、俺は入学許可を出されたくない！！」

呀の呪力を使えば、最強を名乗る五条でも苦戦を強いられるだろう

でも、その力は下手をすれば世界を滅ぼすことだって簡単にできる



「だから！今の俺は弱い！！自分で涙が出るほどだ！」

呀は、ヌイグルミからなぎ飛ばされながらも言葉を紡ぐ

「それでも、俺は！人を奪ってしまうような力使いたくない！！」






夜蛾の口元が緩んだ





「そこまでっ！！」

ヌイグルミに送られる呪力が解かれる

「合格だ。五条、案内してやれ」


「はいよ。呀、入学おめでとう！」

「ツナマヨ！！」

棘が抱きついてくる

呀の目から自然と涙があふれる

「うわぁぁん！！怖かった！！」

棘に抱きつき、泣きじゃくった

「まだまだ、子供だね」

五条は、そんな2人を微笑ましく眺めた

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