オモチャ。【市橋哲人】

オモチャ。5 ページ6

Aside

「心配しなくても、こいつらが終わったら

____お前で遊んでやるよ。」

背筋がゾクリとした。その言葉にも、目が笑っていない表情にも。



学ラン男がスタートを切った瞬間、息が止まりそうになった。

あいつらの気を引くために挑発したのに、何で何もしてこないの…!?

疑問だけが、頭の中でぐるぐると駆け回る。


__途端に、

「うわあぁあぁっ！！」と言う叫びと共に、何かを殴る音が聞こえた。

その叫び声には聞き覚えがある。

___マル……！！

「てやあぁあぁっ！！」

双方、頭部から血を流しているにも関わらず

何度も何度も取っ組みあい互いを殴っていた。

外野はニヤニヤと笑い楽しげに歓声を上げていた。



『マル！やめてぇ！！』と叫ぶけど、マルは、相手の青年の首を絞めることに夢中でこっちに見向きもしない。

このままじゃ、マルが……！！

手首の縄を、力んで解こうとする。

でもそのとき

「ｶﾞﾊｯ……」

相手の青年が、弱々しく咳こんだ。

それを見てマルは

「か、勝った……


勝ちましたぁっ！！」

と言った。

正直、マルが勝ってホッとした。
それは、相手の青年にとっては凄く失礼だとはわかっている。
けど、これでマルは解放されるよね。


そう、安心しきっていたのに。






「……まだだろ？」





「…まだ、生きてんじゃん。




ちゃんと…、絞め殺せよ」

両手で、何かを握り潰すような合図をする学ラン男。



「タイムアップならお前も殺すっつったよな。」

スマホのストップウォッチを見せ、マルに更にプレッシャーをかける。

それにつられ、外野の男達はその秒数を口ずさむ。

『マル…』



名を呼ぶと、ゆっくりと、顔を此方に向けるマル。

「……ぼ、僕…


死にたくないっ…！！」

そして再度、青年の首に置かれている自分の手に力を込めるマル。

涙で顔をぐしゃぐしゃにして。

数秒後、その青年は白目をむいて動かなくなった。

外野はうるさいぐらいの喚声を上げる。


これでマルが、人殺しに……


でも、これでマルは解放されるし、もう矢波高と関わらないようにすれば
前みたいに、楽しい日々を過ごせるよね…？

なのに、

「ちょっと待ったぁー！！」


奥の方から出てきた、ゾウの被り物を着けた大男。



その場が一気に騒がしくなる。

何が、始まるの？



「Bonus stage!!


帰るのは、こいつに勝ってからな。」

どうやらこいつらは、どこまでも極悪人らしい。

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