オモチャ。【市橋哲人】

オモチャ。37 ページ38

押し入れから出て、窓から外を覗くともうすっかり明るくなっていた。てか朝じゃん。


お二人さん、大分盛り上がってたからそんな不思議じゃないけど。


私達を押し入れから出した後、伊佐美は色々なことを話してくれた。

人を殺めてしまったという恐怖。

警察に捕まる恐怖。

愛する人…今宵ちゃんと一緒に居られない恐怖。


おまけに吐き気や目眩に襲われる毎日に耐えられず首吊りをしようとしたらしいが、失敗。

当たり前だけど、普段殺人なんて無縁の伊佐美には、ダメージが大きすぎたのだろう。




でもまぁ……


『良かった。伊佐美が生きててくれてさ。』


「……おう。」


『…あ、あのね伊佐美。私達、今矢波高の爆発事件のことについて調べて、それで伊佐美にも協力を…』

「あー！！！そうそう、俺さあ！
紐の結び方が悪くて生き延びたっつったじゃん！？俺マジあの時さ、神に選ばれたんだなぁって思ったんだよ！GodだぜGod！！凄くね？ヤバくね！？」


突然立ち上がり、私の言葉を被せたかと思えば、何やらまた話が戻ってしまった。


『う、うん。そうだね。』

取り敢えず、話を合わせておこう。


やっぱり、まだ気持ちの整理が出来てないみたい。

触れない方が良かったかな。

「神に選ばれし賢者イサミー、ここに君臨！」


段々テンションも可笑しくなっちゃってるし…


『……ん？そういえば今宵ちゃんは？』


部屋を見渡しても、今宵ちゃんの姿がない。


「あー、今風呂入ってる。」


あ、なるほど。

心のなかで掌を片手でポンと叩く。


『伊佐美さ、今宵ちゃんのこと大事にしてあげなよ？』


「お前に言われなくてもわかってますぅー」


『本当に？」


「だから昨日、寂しい思いさせた詫びにいつもの倍ヤッたんだよ！」

『あのさあ…』


・


・

今宵ちゃんがお風呂から上がってきて、今は4人でテレビ鑑賞。


今の時間帯、ニュースしかしてないからどのチャンネルを開いてもほぼ同じ内容ばかり。


フェミニンな服装をした女性のアナウンサーが、静かに且つ聞きやすい声でニュースを読み上げる。

「……次のニュースです。数日前、都立矢波高校が爆破される事件が発生しました。」


急にニュースが変わって、しかも矢波高に切り替えって…。




「犯行の疑いで逮捕されたのは、小坂秀郎容疑者。」


画面にどでかく顔写真が載せられる。


パイセン……あと少し待ってて。



必ず、真実をつきとめるから。

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