オモチャ。【市橋哲人】

オモチャ。17 ページ18

Aside

昨日の事が頭から離れない。

傷口を舐められた事といい、別れ際のあのキスといい。

思い出しただけで頬が紅くなっていくのがわかる。

もう…なんであんなこと平気で出来るのよ…っ。


気を紛らわす為に、頬を両手で思い切り叩く。

が、その音に吃驚したようで、周りから奇異の目で見られる。

あ、し、しまった。今学校だった。

しかもよりにって人がよく通る廊下で…。


小さく『すいません…』と言って手を降ろす。


「Aどうしちゃったのよー？今日朝からずーっと上の空じゃん。あ、もしかして好きな人でも出来たのかぁ〜？」

唐突な蓮子ちゃんの質問に、思わず動揺してしまう。

『な、ち、違っ…！！』

「おー？その反応は怪しいねぇ…」

楽しげに、顔を覗きこまれる。

『ほ、本当に何でもないからっ！』

「ほいほーい。そう言うことにしとこう。」

信じてないっぽいけど、これ以上言うと私が怒ると察したのか束の間の恋バナは終了。

暫く歩いていると、何やら大急ぎで階段を駆け上がるマルとトビオの姿が見えた。

あんなに急いで一体どこに？

「あ、トビオだ。ちょっと話あるから待っててっ！」

『あ、うん。わかった。』

トビオの方に走って行く蓮子ちゃん。

そう言えば今日、トビオとカラオケ行くって言ってたな。
その打ち合わせ的な感じかな。

話はすぐに終わったようで、蓮子ちゃんは駆け足で私の方に戻ってくる。

「オッケー。ごめんね待たせてっ。』

「んーん。大丈夫だよ。」

再び歩き出す私達。



「あ、ねぇねぇねぇ！Aの好きな人って、まさかトビオ？」


『だーから好きな人なんて居ないって。
トビオは幼馴染ってだけで恋愛感情は全く無いよ。友達としては好きだけどね。』


「へぇ、そうなんだ。んじゃー、この際言っとくわ！



あたし、トビオ好きみたいなんだ。」


『……えぇ！？』


「何かさ、どう言う好きなのかまだよくわかんないんだけど、多分恋愛感情の方の好きだと思うの。柄にも無いこと言うようだけどさ。」


照れ臭そうに髪の毛先をクルクルと弄りながら言う蓮子ちゃんは、まさしく女の子。


そんな姿を見て、協力しないわけにもいかず


『私、応援するよっ！！』


蓮子ちゃんの手を握ってそう言った。


すると、蓮子ちゃんの表情もパッと明るくなって


お互いに顔を合わせて笑い合ったその時。



ﾊﾞｰﾝｯ‼


何処かから、何かが爆発したような音が聞こえた。



何、今の音……？

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