久しぶりの外出 ページ5
Aside
ﾋﾟﾘﾘﾘﾘｯ ﾋﾟﾘﾘﾘﾘｯ ﾋﾟﾘﾘﾘ...((ｶﾁｯ
『……ん、ふわぁ』
八月上旬＿＿夏の蒸し暑さと聞き慣れた音で目を開ける。
目を覚ますためにベッドから降り手を上にして伸びをした。
もうとっくに見慣れた景色が視界に入ってくる。
コンクリートで造られている壁、カラスが入れるくらいの小さめな窓、二人分の机と椅子、それから硬いベッド。
まるで牢獄かのように二人が住むにしては狭くて暗い部屋だ。
こんな部屋に私と涼太は五年も暮らしている。
『ふぅ…今日も行くか』
クローゼットから自分用の運動着を取り出し着替える。
涼太も連れて行こうか、と思ったけれど気持ちよさそうにぐっすり眠っているから今日はやめておこう。
部屋を出る前に狐のお面を付ける。
『行ってきまーす』
そう一言起きてもいない涼太に伝え、朝のランニングに向かった。
＿＿＿＿＿
城の中のランニングコースを三周して部屋に戻ってきた。
まだ眠っているかも、と思い静かに扉を開けて部屋に入る。
ベッドの方に目をやると涼太はまだ少し眠たそうに座っていた。
涼太「…あ、おかえり。A姉さん」
『ただいま。よく眠れた？』
涼太「うん、昨日よりはね」
『それはよかった』
数回言葉を交わした後、運動着から作業着に着替える。
私たちの仕事は国を守る幹部様方の生活のお手伝い。
簡単にいえば使用人みたいな感じ。
城を綺麗に掃除するのは勿論の事、食事の準備や訓練などで怪我をした幹部様の手当ても私たちの役目。
その他にも頼まれた事は問答無用でこなす。
雑用係でしかない使用人に拒否権なんてものは最初からなかった。
『涼太もそろそろ着替えないと間に合わないよ？』
涼太「うん…」
眠たそうにしながら、もそもそと動いて涼太も作業着に着替える。
今から食堂のキッチンに向かって幹部様方の朝食の準備、その後は城の掃除、中庭の手入れ、訓練の補助、それから…。
今日の予定を頭の中で組み立ながら涼太の支度が終わるのを待っていると、扉がノックされた。
『はい、今開けます』
こんな朝から誰だろう？
扉を開けるとその向こうには交渉係の幹部様が立っていた。
『おはようございます、幹部様』
幹部「今日の予定の事で伝えたいことがあるから、至急談話室に来てくれ」
『承知いたしました』
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作者名：夜月 | 作成日時：2024年3月10日 20時
