𓂃◌𓈒𓐍プロローグ - 2𓐍𓈒◌𓂃 ページ3
Noside
涼太＿大人しく疑い深い彼は嗅覚と頭脳に長けており、頭脳戦で彼の右に出る者はいないらしい。
身長や体格はAとほとんど変わらないみたいだが、やはり彼も男だ。
手はどちらかといえば骨ばってごつごつしているし、パッと見であれば細く見えるが、肩や腰周りも案外がっしりとしている。
黒くて艶のある髪は肩まで伸びてきていて、安易なゴムで簡単に結ばれている。
そして、彼は彼女とは違い服で隠すことの出来ない所にも傷や包帯が巻かれているのだ。
包帯の下には数え切れないほどの切り傷や変色した青あざ、所々焼かれた跡まである。
彼も長いこと包帯を変えていないのだろうか。
炭で黒くなってたり、途中で千切れそうになったりしている。
これらは全て、彼の誰にも言えない暗い過去が関係しているのだった。
彼は一度、実の親に捨てられている。
そのせいなのか、心を閉ざしてしまっていて話しかけてもまともに返事が返ってくることは少ない。
しかし、それは理不尽で大嫌いな幹部達の前でだけである。
共に生き抜いてきた双子の姉、Aの前ではとても楽しそうに話していて、ありのままの自分を出している彼。
これといって特別な会話の技術は持ち合わせていないが、彼と話している時はみんな優しい気持ちになるという。
だが、そんな彼の顔も全て見ることは出来ない。
それは、彼も狐のお面で顔の上半分は隠されているから。
綺麗な群青で少し控えめに彩られた和風な狐のお面。
そのお面の両端にはヒラリと優雅に揺れる青色の飾り房がついている。
お面よりも下にある口の左端には少し長い切られたような跡が残っている。
それに加え気配をある程度消せる忍者のような武術。
それだけは幹部達も一目置いているようだった。
それも、戦闘で表には出ない彼なりの護身術。
身の危険を感じた時は気配を消し、「誰もいない」と相手に大きな油断をさせ、その隙をつくという昔からの戦略らしい。
なかなかに巧妙なやり口だが、これを身につけたのは彼が七歳の時。
そして今の彼は十五歳。
八年もの年月をかけて磨き上げてきた武術はそれはもうあっと息を飲み込むようなものだ。
戦闘中のほとんどは城に篭もり幹部達に指令を出している。
最短ルートや敵の位置を正確に伝えるのだ。
これが、彼なりに考えた"負けない"ための戦い方。
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作者名：夜月 | 作成日時：2024年3月10日 20時
