四十杯目 ページ41
私達は一つのテーブルを挟み、向かい合って座った。
『…何の用で呼んだの』
「別に。育てた子の顔くらい見たいでしょ」
祖母がそうツン、と言い放った。
「…そっち方は」
「轟燈矢です、…喜多久さんと、お付き合いさせていただいています」
燈矢が頭を下げた。
「そうかい。…悪いね、馬鹿な娘で」
「そんな事ないです。俺は喜多久さんに救われてるので」
「それこそないよ、こんな子が」
「…喜多久さんは、優しいです。それに、強いです。心身共に強くて、いつも助けられてばかりです。なので、悪いように言うのやめてもらっていいですか。育ての親、なんでしょう」
燈矢は敬語を絶対に外さずに、私の祖父母にそう言った。
「確かに、育ての親だよ。でもね、この子の両親は馬鹿な人だよ。駆け落ちして、勝手に逝って。それで、この子も勝手に出て行って。私達の気持ちを考えてさえくれない」
私は何も言えなかった。ずっと下を向いたまま。
「…燈矢さん、だったか。喜多久は勝手にフラッといなくなって、そのままどっか行っちまうようなヤツだ。そんな奴でも、君は好きでいれるのかい」
私は俯きながら、燈矢をチラリと見た。
「当たり前でしょう。いなくなったとしても連れ戻します。誰かに攫われているのなら、助けに行きます。俺はヒーローにはなれない。でも、喜多久の…喜多久だけのヒーローになりたい。それほど、喜多久を好き…いや、愛してます」
燈矢は祖父の目をジッと見て、ハッキリそう言い切った。
『燈矢…』
「俺がこんな風になれたのも、全部、全部喜多久が与えてくれたから。喜多久がいなければ俺は道を踏み外していた。心を持ってなかった。喜多久は…冷め切った俺の心に、火を灯してくれた。そんな喜多久を、それでもまだ馬鹿な娘だと思うのか」
場が、シィンと静まり返る。
「…いつまでも、馬鹿な向かうだよ、喜多久は。知らない所で幸せになって…。教えてくれやしない」
『…』
「…どのくらい付き合ってるの」
『…2年』
前の人生と、今の人生を合わせて。
『私が…前の彼氏に暴力されてて、その時に助けてもらったのが、燈矢』
「そう。…じゃあ、今は平気なのね？」
『…うん』
「幸せなのね？」
『うん。とても、幸せ』
私はゆっくりと顔を上げて、祖母の顔を見た。
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オペ - 無事に尊死…!!! (2022年10月20日 19時) (
レス) @page44 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
sizuku(プロフ) - 主さんのお話最高すぎます、泣！！面白いお話ありがとうございました！！ (2022年4月16日 21時) (レス) @page44 id: e0ce1464e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yu→ru | 作成日時：2021年5月16日 22時
