三十五杯目 ページ36
そして、2.3ヶ月は同じように過ごした。
ただ、秋…10月に入ったある日、アクシデントは突然起こった。
『え…サチヨさん、お店辞めてしまうのですか？』
私はコーヒーを淹れながら、座り込んでいるサチヨさんに目をやった。
「うん、そろそろ歳だしねぇ…」
「えー！嫌ですよサチヨさん！」
最近毎日来てくれているあの雄英女子達が悲しげに話しかけた。
「足腰も痛いのよ…。この店は、閉めたくなかったんだけどねぇ」
『…そう、ですか』
「…あ！じゃあ、喜多久さんが店主になっちゃう、とか！」
三奈ちゃんが喜ばしげにそう放った。
『私が…？なれないよ。だって、サチヨさんの思い出の場所なのに、私がどうこうする事できない』
「でも…」
しばらくの沈黙が走った。その沈黙を破ったのは、サチヨさんの一言。
「それ…いいんじゃないの？」
『サチヨさん？』
「私としても、この店を潰したくはないからさ…。喜多久ちゃん、ここの店長になってくれないかな。彼氏さんとも一緒に働けばいいしさ」
「それいい！喜多久さんの彼氏さんも見れるし！ね！」
『…いいんですか？』
「喜多久ちゃんの好きなようにしてくれ。この子達の、楽しめる場所に」
サチヨさんは私の手をギュッと握った。
「よろしく頼むよ、店長」
『…頑張って努めさせていただきます』
私も、同じように手を握り返した。
「アンタは私の娘みたいなもんだ…ここ、私の住所。何かあったらコーヒーの淹れ方も教えてあげるし、他の悩み事でも、相談しにおいで。後は年金暮らしだからさ、毎日いるから」
声高らかに笑うサチヨさん。私は、娘のように思われていたことにとても心が温かくなった。
___出て行くなら出て行け、この親不孝共！！___
いつか聞いた、この言葉。ずっと私の心に残っていた。でも…こんな呪い、すぐに和らいでいった。
『ありがとうございます…サチヨさん…！』
私の目からは、自然と涙が出ていた。勿論、嬉し涙だ。
「若いのに苦労してたんだろう？見りゃわかるさ。君達も、喜多久ちゃんのことよろしくね。きっと、すぐに壊れちゃう子だから。ヒーローの卵たち、期待してるよ」
「任せて下さい！」
「お任せ下さい。この八百万百、約束は守りますわ」
「喜多久さん、一人で頑張っているイメージがあるわ。私達の事、頼ってほしいわ」
「ウチも…できることは少ないかもしれないけど、一人で抱え込まないで下さい」
「ウチら、女子友じゃん！」
その言葉を聞いて、私の目からはさらに涙が出ていた。
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オペ - 無事に尊死…!!! (2022年10月20日 19時) (
レス) @page44 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
sizuku(プロフ) - 主さんのお話最高すぎます、泣！！面白いお話ありがとうございました！！ (2022年4月16日 21時) (レス) @page44 id: e0ce1464e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yu→ru | 作成日時：2021年5月16日 22時
