二十九杯目 ページ30
数日後。ついに久しぶりの出勤日。
喫茶店で働くので、出来るだけ綺麗な格好をした。
「デートにでも行くのか？」
『喫茶店に綺麗なお姉さんがいたら嬉しいでしょ？』
「自分で綺麗とか言うなよ」
『化粧とかしてるから綺麗なの』
私は伸びていた爪を切り、鞄に必要なものを入れていく。
「俺の女は化粧してなくても綺麗だけどな」
『へぇ〜、一体どこの誰でしょう？』
「俺の目の前にいる柴胡喜多久って女」
そう言うと、燈矢は私の後ろからぎゅっとハグをしてきた。
『燈矢も仕事頑張るのよ？燈矢ならできるから』
「自己肯定感上がる言葉どうも」
『じゃ、行ってくるね』
私は燈矢に軽くキスをして、家を出た。
『おはようございます！』
私はスタッフルームに入り、はっきりと挨拶をした。
やっぱり、気に入られる人は挨拶ができる人というイメージが大きいから。
「おはよう、元気ねぇ喜多久ちゃん」
『挨拶は大事かと思いまして』
エプロンを着用し、店へと出ていった。
この喫茶店、"muffin"は結構前からある喫茶店らしく、店主のサチヨさんはこの店を立ち上げたらしい。
『まずは何をすればいいでしょう？』
「そうねぇ…まだコーヒーとか作らせるわけにはいかないしねぇ…とりあえず、接客してくれるかしら？」
『わかりました』
私はボールペンを胸ポケットにさし、客の来店を待った。
カランカラン、と綺麗なベルの音が鳴った。
『いらっしゃいませ。お一人でよろしいでしょうか？』
「はい」
『こちらの席にどうぞ。ご注文が決まり次第、お呼びください』
「あぁ、僕はいつものなんだ。新人さんだよね？」
『はい、よろしくお願いします』
「よろしく。えぇとね、僕はいつもブレンドコーヒーを頼むんだ」
『かしこまりました。少々お待ち下さい』
私はカウンターへと戻り、サチヨさんに注文内容を伝えた。
「あぁ、あの子だね。了解」
カウンターからチラリと客の方を見て、嬉しそうにコーヒーを淹れだした。
なるほど。ここは長年愛されている喫茶店らしい。
イメージを損なわないように頑張らねば。
「できたよ。これ、持って行ってくれないかな」
『わかりました。…お待たせしました。こちらブレンドコーヒーになります』
「ありがとう」
男性はパソコンを取り出し、コーヒーを一口飲むと仕事に取り掛かり始めた。
『いつもあそこで？』
「えぇ。毎日来てくれるの」
どうやら、この店には常連が何人かいるらしい。
私も覚えなきゃ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オペ - 無事に尊死…!!! (2022年10月20日 19時) (
レス) @page44 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
sizuku(プロフ) - 主さんのお話最高すぎます、泣！！面白いお話ありがとうございました！！ (2022年4月16日 21時) (レス) @page44 id: e0ce1464e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yu→ru | 作成日時：2021年5月16日 22時
