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佰参拾話 ページ34

『アストルさん』

ある夜の事だった。

スッパは既に床に就き、起きているのは私とグレイだけだった。

『明日、ゼルダ様の元へ貴方の観察結果を報告しに行きます』

グレイは少し不安を孕んだ声でそう伝えた。

『…貴方も、来たいですか?』

彼女の瞳は私の目をしっかりと捉えて離さなかった。

「…何か不安に思う事でも?」

グレイが不安に思う事は一切ない。

だが、グレイは引き攣った笑顔で、言いたい事が言えないような様子だった。

『もし…もし、ですよ。貴方の観察結果が良くても悪くても…貴方への、魔物としての扱いが変わらなかったら…』

グレイの手は震えていた。

「おい、何を震えて…はぁ。貴様は優しすぎる」

私はグレイと一定の距離を保ちながら近づいた。

「貴様が私に思う気持ちは前に聞いた。だが、貴様が私を赦そうと世間は私を赦さないだろう。そんな事、最初から分かっている」

『でも…』

「私は、私自身がどうなろうと後悔はしない。一度は滅びた身、こうしてもう一度今世にいること事態本来は赦されぬべきことなのだ。お前が案じようが案じまいが私は城へ行く。罰なら受ける覚悟はできた。…グレイ達と過ごせた日々は悪くないものだった」

『なんでそんな、死ぬ事が決定してるみたいに…!』

「この経過観察は、私の魂が再び厄災に取り込まれるか、もしくは私の身に厄災が憑依していて、それが暴走するかしまいか…そういったものだろう。…良いのだ」

『…』

「明日は早いのだろう?もう休むと良い」

『…わかりました』

きっと、私は明日死ぬ。

だが、今日まで生きていたこの数ヶ月余りはとても楽しい余生であったと思う。

何より…絶対に感じ得ぬ"心"を感じる事ができた。

私に、居場所をくれた。

私は、初めて幸せだったのだ。

グレイと過ごしてわかった。

私はかつては厄災を信仰していた。

だが、それに裏切られた。

私の人生は裏切られてばかりだ。

女神にも、厄災にも、親にも…全部に裏切られた。

だが、グレイは私を唯一裏切らなかった。

私はグレイに、一種信仰的な愛を感じている。

決して私と結ばれてくれ、なんて思わない。

グレイはグレイの愛した人と幸せになってほしい。

グレイになら…裏切られたって構わない。

それくらい、私はグレイに深い愛を抱いている。

最後まで私を見てくれているグレイがいるなら、私は死ぬ事だって恐怖する事はないのだ。

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ねこ - いつも影から楽しく見させて頂いております<(_ _)>3章を続けていくのもとても気になります…が、個人的にyu→ruさんの恋情シリーズも見てみたいな〜、と思ったので、私は3を選ばせて頂きます。 (6月20日 16時) (レス) @page7 id: 491a8dd465 (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ(プロフ) - シリーズ3作目おめでとうございます✨私は3章がどんなふうに続いていくのか気になるので1です! (6月19日 6時) (レス) @page7 id: dbdf82a303 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:yu→ru | 作成日時:2023年6月19日 1時

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