佰弍拾肆話 ページ28
『本当に大丈夫ですか？全然、体がきついなら寝たままでも…』
「何度も言っている。道具の場所は覚えた。貴様、まるで母親のようだな」
『す、すみません…。それじゃあ、お願いしますね。日が落ちる頃に戻るかと思います！スッパさん、行きましょうか』
「あぁ。貴様、家の金品を売るなどするなよ」
「するか」
私は彼らが行くのを見届けた後、がらんと静かになった家を見渡した。
自分の若き頃を思い出す。
母親や父親は家にいる事はなく、常に一人で生活してきた。
貧しい村だ、親が家にいないのは当たり前であった。
だから、自分が生き延びるための術は会得しているつもりだ。
風邪を引いた時、怪我をした時。
全て一人で行っていた。
このくらい、どうということはない。
むしろ、整い過ぎている環境に感嘆が出る。
私は少ししかグレイを見ている時間がなかったが、それでも私にはわかった。
グレイは少しずつ努力を重ね、このような生活に自分の人生を導いたのだと。
さて、自分の回想等はここまでにしておこう。
私は早速家事に取り掛かる事にした。
『只今〜…って、うわ！』
「帰宅早々そのような発言は如何なものかと思うがね」
『いや…！私が掃除する時より綺麗になってるし、物も片付けられてる…。アストルさん、何者…』
「…しがない占い師だ」
『嘘、占い師関係ないですし！』
「グレイ殿、どうしたでござ…」
スッパは風呂に使う薪を持ったまま硬直した。
「…言っただろう、案ずるなと」
「占い師殿、貴様何者」
「そのくだりは先程もした」
二人は家の中に入り、さらに感嘆の声を漏らした。
『え…！ご飯まで作ってくれたんですか…？！』
「日が落ちる頃、と言っただろう。何もおかしい事はないが」
『一汁三菜ちゃんとしてある…』
「貴様、家政婦にでも転職したらどうでござるか」
「生憎、私はこれを売りにするつもりはないんでね。私はもう済ませてあるから勝手に食べると良い」
『は、はい。いただきます…ん？！お、おいしい…！私よりおいしい………』
「占い師殿が作ったとは思えぬな」
勝手な事を言いながら二人は箸を進めていた。
私は風呂釜の下に薪を焚べ、適温に調節し、風呂釜に蓋をした。
私は遠くからグレイを眺めた。
グレイは、随分幸せそうに飯を頬張りながらスッパに話しかけていた。
以前なら、この光景に妬みをもっていただろう。
だが、今は何故だろうか。
そのような感情は湧いてこなかった。
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ねこ - いつも影から楽しく見させて頂いております<(_ _)>3章を続けていくのもとても気になります…が、個人的にyu→ruさんの恋情シリーズも見てみたいな〜、と思ったので、私は3を選ばせて頂きます。 (6月20日 16時) (
レス) @page7 id: 491a8dd465 (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ(プロフ) - シリーズ3作目おめでとうございます✨私は3章がどんなふうに続いていくのか気になるので1です！ (6月19日 6時) (レス) @page7 id: dbdf82a303 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yu→ru | 作成日時：2023年6月19日 1時
