佰拾伍話 ページ19
「…帰っ、ちまった…か…」
俺は伸ばしかけた手をそっと直した。
グレイが白い光に包まれ、先程立っていたであろう場所にはもう何も残ってはいなかった。
俺は手拭いを目の前に持ってきた。
「…たしかに、お前はここに来たんだよな」
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「皆、先代コーガを見てんだろ？！俺は、ただの代わりでしかないんだろ？！！」
俺が次期コーガとしての修行を積んでいる時、グレイに向かってそう叫んだことがある。
俺は、当時は先代コーガのようには強くなかった。
そう、ただの八つ当たりだ。
若かった俺は、グレイをストレスの吐口にしてしまっていた。
グレイはいつも、俺の言う事を黙って聞いていた。
聞いて、噛み締めていた。
「どうして、何も言わないんだよ…！」
グレイは俺をじっと見つめた。
『…確かに、貴方は前コーガ様の名を継ぐ…新たなコーガとして育たなければなりません。しかし…貴方は貴方なのです。私は、決して貴方を前コーガ様と重ねてはおりませんよ』
「んなの、口先だけだろ！」
『いいえ。私は何も、貴方に前コーガ様の全てを教えているわけではありません』
「…意味わっかんねぇ！」
俺はとうとう嫌になって、その場から逃げ出した。
今となってはグレイが言いたいことはよくわかる。
俺の使う技は確かに先代と同じものもある。
しかし、その中には俺が独自に仕上げた技もあったのだ。
グレイは、ずっとオリジナルとして見ていたのだ。
俺がその意味に気づいて、謝ろうとしてトパーズの髪飾りを買ったが、時既に遅し。
グレイは病床に伏し、最後に会ったのはその時以来だった。
俺はずっと後悔していたのだ。
謝らなかった事。
最期に会わなかった事。
だから、グレイを…過去のグレイを利用する事で、その後悔を晴らした。
俺はこれが決して良い事だとは思えない。
だが…こうするしかなかった。
なぁ、グレイ。
見てるか？
意外と、俺様も落ち着いてきただろ？
「コーガ様、リンクがまた我々の仲間を倒しました！ここまで来るのにも時間の問題です！」
「何！いいか、お前たち！しっかりアジト内は見張っておくんだぞ！」
「はっ！」
俺本来の名は忘れてしまった。
だが、それでもいいのだ。
俺は、俺自身であるから。
そうだろ？グレイ。
"はい、そうですね"
後ろから、懐かしく、優しいグレイの声が聞こえた気がした。
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ねこ - いつも影から楽しく見させて頂いております<(_ _)>3章を続けていくのもとても気になります…が、個人的にyu→ruさんの恋情シリーズも見てみたいな〜、と思ったので、私は3を選ばせて頂きます。 (6月20日 16時) (
レス) @page7 id: 491a8dd465 (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ(プロフ) - シリーズ3作目おめでとうございます✨私は3章がどんなふうに続いていくのか気になるので1です！ (6月19日 6時) (レス) @page7 id: dbdf82a303 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yu→ru | 作成日時：2023年6月19日 1時
