恋情に揺らるる恋螢。【2】

漆拾陸話 ページ28

「本日は来て頂きありがとうございます」

「そりゃあ団員の命助けて貰ったんだ、姫サンの言う通りにしなくちゃなぁ…いや、今は女王サマか」

あの戦いの後、ゼルダ姫は王位を継承され、ハイラル王国をまとめる女王となった。

「借りた恩は返すが団の教え…出来る限りの事は致そう」

コーガ様もスッパさんも、仮面を常に外し、王家に逆らわない、という意思表明をしている。

この言葉に裏はないだろう。

『それで…英傑様達や騎士様もいる中で、今日は何の話を？』

私が本題に切り出すと、ゼルダは深刻そうな顔をしてゆっくり話し始めた。

「近頃、フーマ軍の活動が盛んになって来ています。死傷者も増えている…王家の者としては、このような事態は芳しくありません。フーマ軍は元イーガ団だけならぬ、ハイラル人といった人達からも出ていると聞いています」

残念ながら、フーマ軍のアジトは未だに発見されていない。

だから、度重なる奇襲や暗殺により、姿を見たという者自体が少ない。

「ですので、この事態を解決する為にあなた方の協力を仰ぎたいのです」

コーガ様は椅子からぴょいっと降り、机に手を置きながら話した。

「言いてぇことはよぉくわかる。だが、俺様達は汚ねぇ仕事からは手を洗ったんだ。それに、元イーガ団の奴らをやれっつーなら、それは頂けねぇ」

「はい、それは存じております。あなた方にそのような仕事を任せるつもりはありません…誤解を招くような言い方をしてしまい、申し訳ありません。あなた方には、フーマ軍のアジト捜索に協力して欲しいのです」

「何故拙者達にさせたい任務なのか、お聞きしても？」

「それは僕から説明するよ」

英傑のリーバル様が口を開いた。

「僕たち英傑はこの会議より先にフーマ軍のアジト捜索及び捕縛に取り掛かっている。残念ながら僕の力でも奴らは安易に逃げ切ってしまった。その時に言っていたのさ。イーガ団に復讐を、とね」

「つまり、こうやって一般国民を狙ってるのも、王家に携わったアンタ達を誘き寄せる為の罠ってわけさ」

ウルボザ様が淡々とまとめた。

「アイツらは、お前さん達が…こんな言い方しちゃ悪いが、寝返った事を理由に、随分頭に来てるらしいんだ」

ダルケル様は頭をぽりぽりと掻きながら、言いづらそうにしていた。

「でも、貴方達が真正面からきって出てしまうと危ない…フーマ軍は、思っているより力をつけているみたいなの」

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