恋情に揺らるる恋螢。【2】

漆拾壱話 ページ22

拙者はヴァーリンの柔らかい表情を見て、今まで何を思って生きてきたのか…察せられた。

「で…もう一つ、話があるんだろう？」

ヴァーリンは拙者の事を全て見透かしているようにそう言った。

「大方、グレイの事だろう？…何、私はもう何もかもの準備は整えている。何を言われても驚きはしない」

ヴァーリンは拙者を見た。

拙者は意を決して、ヴァーリンに伝える事にした。

「ヴァーリン殿…グレイ殿を、拙者に下さらぬか。必ず幸せに致す。もう二度と、グレイ殿を傷つけさせないと約束するでござる」

ヴァーリンは微笑んだ。

「…親馬鹿と言われてしまうかもしれんが、私はグレイの選択は間違いないと思っている。グレイは…良い選択をしたよ」

ヴァーリンは拙者に近寄り、拙者の手を握った。

「ただ、グレイを…娘を幸せにしてほしい。それだけだ」

握る手に力が入り、彼の願いの強さを噛み締めた。

「約束するで候。必ずや…幸せにする」








「よ、スッパ」

「コーガ様」

「さっきの話、悪いが聞かせて貰った」

コーガ様は拙者の肩を叩いた。

「俺様はグレイの事は4年間しか見てない。…が、ヴァーリンと同じみたいに、娘みたいに思ってる。アイツはよく慕ってくれたしなぁ。…よろしく頼むぜ」

「勿論。グレイ殿の幸せを守り通すでござる」

拙者は足早にグレイの元へ向かっていった。

漆拾弍話→←漆拾話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す