漆拾話 ページ21
私…ヴァーリンはグレイが出て行った方向に目をやった。
ミファー様のおかげで怪我は完治し、無事意識も取り戻した。
それだけで、独り身の私にはとても嬉しい事だった。
「ヴァーリン」
私は後ろを振り返った。
「ハイラル王。私に、何か御用ですかな」
近衛兵を二人連れ、ハイラル王が私を見ていた。
「…御前の妻…ハリスについて話したい」
「あぁ、知っていますよ。気が狂った…と聞きましたが」
私はそう言い放った。
どんな理由にしろ、私が引き起こした結果だ。
何も変わるはずがない。
「いや…それは儂の間違いであった。ハリスは…御前が子を連れて城を逃げ出した後、古代兵器を解体していったのだ。こんなのは戦いの元になる、と」
「…!」
私は目を見開いた。
ハリスが…そんなことを?
「儂は…あの時から間違っていたのかもしれぬ。御前やハリスの言う通り、古代兵器の開発をやめていれば…戦に勝利したとはいえ、ここまで犠牲を出さずに済んだかもしれぬ。儂は…当時の儂は、ハリスが怖くなってしまった。まるで、未来を予知しているようであった」
ハイラル王は私の隣に立ち、広い平原を見た。
「故に…儂は…」
「ハイラル王。私は貴方を恨んでなどおりませぬ。元より私が…ハリスと共に逃げ出したとしても、きっと結末は変わらなかったでしょう。きっと…ハリスもわかってくれるでしょう」
ハリスは、最後まで私を信用していてくれていたのだ。
だから、体を張って私が戻って来られる状況にしようとした。
私は、ベランダからグレイの様子を見た。
花を摘み、城の方へと歩いて行っていた。
二つの花束を抱えていた。
一つは白い花束。
もう一つは紫の花束。
きっと一つは献花で、一つはあの占い師に皮肉を言う為のものであろう。
グレイは…本当にハリスによく似た。
優しく、そして逞しく。
「私だけだ…先に進めていないのは」
「…儂も、王妃がゼルダを産んでからすぐに亡くなり…長い時、前が見れなかった。初めて王妃の大切さを知ったのだ。…そういう部分では、お互い様…というところか」
「そうでございますな」
ハリス。
もし…もし、来世でまた会えたなら。
その時は、私を選んでくれるだろうか。
いや…選ばせてくれ。
ハリス。
私は確かに、お前を愛していたのだ。
私の目から、涙が一つ滴り落ちた。
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yu→ru(プロフ) - ゆたんぽさん» 途端に出てきたオリキャラについての感想ありがとうございます…!笑 めちゃくちゃオリジナルストーリーなので批評とか少し怖かったのですが、めちゃありがたいです…!😆 (6月19日 1時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ(プロフ) - サイカが呪いを解くまでのストーリーが好きすぎます…😭 (6月19日 0時) (レス) @page50 id: dbdf82a303 (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆたんぽさん» すみません〜、ちょっとバタバタしていて…笑まだまだ続きますよぉ〜〜〜!!!😆 (6月3日 19時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ(プロフ) - 2日ぶりの更新!やっと正式にくっ付きましたね!!嬉しすぎて発狂しました…wこれからも更新頑張ってください!!! (6月3日 0時) (レス) @page22 id: dbdf82a303 (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆたんぽさん» いつもコメントありがとうございますぅ…!!!できるだけ毎日投稿をしてるので是非読んで下さると私が泣いて喜びます…😇 (5月25日 23時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yu→ru | 作成日時:2023年5月21日 0時