恋情に揺らるる恋螢。【2】

陸拾陸話 ページ17

『ふぅ…』

私はハイラル城前に紫色の花を手向けた。

『負けてるじゃん、アストル』

私は城に向かってそう言い放った。

この花…仏花は、ただの仏花ではない。

『貴方、私の小瓶を盗んだままガノンに吸収されたでしょ。あれ、試作品だったんだよ。相変わらずひどいな』

その時に使った花を私は彼に手向けた。

この行動は、決して彼に少しでも好意を抱いているだとか、同情だとかではない。

『恨みはしないよ。…でも、貴方がしてきた行動。それは罰に値するから…ガノンと一緒に、共に生きるといいよ』

私が目覚めた時、アストルの最期がどんなだったかを皆から聞いた。

私の体を生贄としてガノンに捧げようとし、肉体に奴の魂を移そうとした。

考えただけでもゾッとするが、アストルなりの愛の形だったのだろう。

『私達…分かり合えなかったのかな』

アストルは未来を変えないように、手を尽くした。

決まっている未来が易々と変わっていいものではない。

アストルの考えはよくわかる。

しかし、協力できていれば、何か変わったのではないか。

私はそう思った。

『さて…』

私は赤い着物を翻し、ハイラル平原へと歩いて行った。

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