恋情に揺らるる恋螢。

肆拾伍話 ページ46

私はあれからずっとスッパさんを探しているが、中々見つからない。

夜、部屋にも戻ってこないしアジト内にはいないようだ。

『うーん…』

「何を考えている？」

『わっ！？…アストル様、急に驚かさないでください』

この人相手に素っ頓狂な声をあげてしまった自分が情けない。

『…別に、最近スッパさんを見かけないな、と』

「フン、愛想でも尽かされたんじゃないか」

『なっ！』

アストルは大層興味なさそうにあしらった。

『はぁ…』

「…そんなに彼奴を好いているのか？」

『…そりゃあ、好いてないと言えば嘘になりますけど。もう私達の事はアジト内では噂されてますし』

「馬鹿馬鹿しい…」

私は部屋に戻ろうとすると、アストルも後ろからついてきた。

『…何かまだ用が？』

「貴様は薬学を学んでいるそうだな」

『薬学…とはまた違いますけど。どちらかと言うと調合の方が正しいんですかね。それが何か？』

「何をそんなに怒っている？私はただ聞いているだけだろう」

『怒ってなんか、』

「そうやって彼奴が見当たらない行き場のない怒りを私に向けるのはやめろ。見苦しい」

思わず図星を突かれ、私は少し冷静を取り戻した。

確かにそうだよな、とは思う。

『すみません。…少し頭を冷やしてきます』

部屋に戻るのをやめ、外に出ようとした時、不意に腕を掴まれ、壁に押し付けられる。

『いっ…？！』

「私は…貴様の恋をしている時の顔を見るのが嫌いだ」

『は、はぁ？』

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