恋情に揺らるる恋螢。

参拾玖話 ページ40

『…』

私はアジトから見える景色に一つ溜息を吐いた。

変わり映えのない景色。

普遍なのは良い事だけれど、欠けている要素が一つある。

『最近、スッパさんいませんねぇ…』

ダラダラとツルギバナナを食べているコーガ様に対してではなく、ただの独り言としてそう呟いた。

「俺様も最近会ってねぇな…どこほっつき歩いてるんだかなぁ」

『…もう、コーガ様バナナ食べ過ぎです。お身体に障りますよ』

私はひょい、とバナナを取り上げて残りのバナナを自身の口の中に放り込んだ。

「あーっ！俺様の！」

『…コーガ様も心配なんですよね。スッパさんのこと。ここ最近、生活習慣がさらに荒れてきています』

「そりゃあ、なぁ…」

二人の間に沈黙が走る。

すると、入口の方から音が聞こえて、私達はそちらに視線を向けた。

「こんな所にいたか、グレイ」

部屋に入って来たのはアストルだった。

『何でございましょう』

「言ったであろう？私の側を離れるな、と」

「おい、お前。少し話がある。グレイ、席を外せ」

いつものコーガ様からは聞かないような、冷静な声色を聞いた私は一礼をして入口に向かった。

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