参拾捌話 ページ39
「…それで?何用でござるか」
拙者は夜中にアストルに呼び出され、誰もいない居間にやって来た。
「貴様に任務を課したいと思う。しばらく、単独で退魔の騎士の監視をして貰いたくてね…」
「拙者にはコーガ様の護衛という使命があるで候、その要望は取り下げ願うでござる」
元より、アストルの願いなど書くわけもあるまい。
あれだけ指示だけをして、結果を残す事ができなかった奴に一体何ができようか?
拙者は彼を無力だと判断した。
「…ほぅ?私の言う事を拒むと。…言っただろう?私に逆らう事はするな、と」
アストルは赤紫色の靄を出した。
それはどんどん形を作っていき、次第には拙者が良く知る形へと変化した。
「グレイ…殿?」
「これはグレイの幻影…つまり分身だ。私は貴様がグレイに募る想いは知っている」
アストルは分身に近づいた。
「貴様が拒むと言うのなら…グレイをどうしてやろうか?」
「腹を切り裂く?目玉を穿り出す?いや…そんなことでは生温い。貴様がもっと嫌がるような事をしてやろう」
アストルはグレイ殿の分身に触れた。
「貴様の目の前で頭を撫でてやろうか。それか、口付けを交わす?」
アストルはグレイの分身の背後にゆっくり回り込み、分身の下腹部に手を当てた。
「それとも…体を重ね合わせようか?」
「やめろッッッ!!!!」
拙者は声を荒らげた!
腹の底から沸々と怒りが湧き立ってくる。
「ならば私の言う事を聞くがいい。貴様もそんなものは見たくないだろう?」
アストルは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「………」
「それに、今が一番大変だと言うのに、恋に現を抜かしていいのか?今に足元を掬われるぞ」
「貴様…一体、何が目的でござる」
「何度も言っているだろう?厄災ガノンの復活だ。その為にならどんな事だって成し遂げる。使える駒なら使った方が良いだろう?」
拙者はいよいよこの目の前の男に殺意を感じ出した。
「拙者が不在の時…グレイ殿には、決して手を出すな」
「それは貴様の働き次第だ。嫌な思いをしたくないのなら精々身を粉にして働いてくれ」
拙者は敗北感を味わった。
グレイ殿が人質にされている。
本当であれば、今すぐに切り刻んでやりたいところではあるが…状況が状況だ。
拙者はアジトを背に、騎士の元へ出発した。
「さて…この次はどうしてやろうか」
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アッキー - 初めまして!スッパ夢見させて頂きました!凄く面白かったです!Twitter(X)もフォローさせて頂きました!アッキー@×OSP&T.K.familyというアカウントなので是非フォローしてくれると幸いです!無理なら構いません。 (11月25日 11時) (レス) @page27 id: 9a164c919b (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆず塩さん» ひえぇ…コメありがとうございます…!! (5月15日 0時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - 恋心の利用は辛いですよね…この小説本当に感情移入ができるのが良すぎて泣きそうです… (5月14日 23時) (レス) @page36 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆず塩さん» ひゃああ!ありがとうございます!!!😭 (5月10日 23時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - めっちゃウズウズしますね🥰最高すぎます!! (5月10日 22時) (レス) id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yu→ru | 作成日時:2023年5月4日 23時