恋情に揺らるる恋螢。

参拾壱話 ページ32

『コーガ様！！アストルは絶対に私達を裏切るはずです、早めに切っておかないと…！』

私達はアストルに聞こえないような場所に来て、私はそう訴えた。

『このままだとイーガ団は乗っ取られます、考えてください！』

「しかしだなぁ…」

「グレイ殿、少し落ち着くでござるよ。拙者達も、警戒は怠っていないでござる」

『でも…！』

「…グレイが団のことを考えてくれてんのはよぉくわかってる。俺様にだってちゃんと伝わってる」

コーガ様は私の頭をいつかのように、くしゃっと撫でた。

「だが、俺らは王家を潰さなきゃならねぇんだ。グレイには因縁も何もねぇけどな」

『…』

「スッパ、しばらく側にいてやってくれ」

「御意」

たしかに私には王家を恨む理由などない。

でも、皆が…恨むというなら…。

「グレイ殿。考え過ぎは逆に最善ではないでござる」

『…わかってます。ごめんなさい。あまり、あの人…得意じゃなくて』

「グレイ殿だけではござらぬよ。…少し、散歩をしないか」

『え？』

「この静かな景色が見られるのも、後数ヶ月でござる。見納め…と言っては不謹慎かも知れぬが」

そうして、私達は夜の散歩を始めた。

参拾弍話→←参拾話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す