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弍拾陸話 ページ27

『ん…』

私は勝手に閉じてくる瞼を無理矢理こじ開けて体を起こし、ぐん、と伸びをした。

『…』

私は自分の手をぼぅ、と眺めた。

昨日のあれは、夢だったのだろうか。

朧げながら多少は覚えている昨夜の記憶。

誰かに手を繋がれた。

その手が大変大きく、まるで…父のように感じられた。

しかし、父のような父性とはまた違う優しさを感じ取れる手だった。

そっと握り返して、私はその手を抱きしめた。

とても、温かった。

そのあとは覚えていない。

あれは、きっと…。

「おや、起きていたのでござるか。お早う」

『ひゃっ?!お、おはようございましゅ!』

いつの間にか部屋に帰ってきたスッパさんに声をかけられた。

考え事をしていたからか、噛んでしまった。

『は、恥ずかしい…』

「何か悩み事でござろうか?」

『いえ別に何も!』

「…ふふ、相変わらず元気が良い事」

スッパさんが私の近くに寄り、髪をそっと撫でる。

「寝癖がついているでござる。櫛を」

『は、はい』

私はいつも使っているヘブラツバキの木から作った櫛をスッパさんに渡した。

スッパさんは優しく髪を梳かしていく。

「治ったでござるよ。グレイ殿にしては珍しいでござるな」

ははは、と笑うスッパさんに、私は照れ笑いをするしかなかった。

私は知っている。

スッパさんから向けられている感情の名を。

きっと、自惚れではないはずだ。

いや、絶対に自惚れではない。

だから、気づいてしまった日からどんな顔をして、どんな言葉で貴方に接したら良いかわからなくなってしまった。

きっと、その行動一つ一つが私を大切に想っている。

そう感じれるくらいには愛されているんだと思う。

だけど…スッパさんはその感情を私に言おうとはしない。

私は…イーガ団が好きだ。

コーガ様も好きだし、幹部の皆も、誰もを好きなのだ。

けど、スッパさんに対しての好意は…。

あぁ、きっと私も絆されてしまったのだろう。

スッパさんが部屋を出ていくその背中を見つめる。

『…いつかきっと、伝えるから』

今の未熟な私には伝えることはできないけど。

満を辞した、その時になら。

きっと、心から愛を伝えられるはずなのだ。

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アッキー - 初めまして!スッパ夢見させて頂きました!凄く面白かったです!Twitter(X)もフォローさせて頂きました!アッキー@×OSP&T.K.familyというアカウントなので是非フォローしてくれると幸いです!無理なら構いません。 (11月25日 11時) (レス) @page27 id: 9a164c919b (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆず塩さん» ひえぇ…コメありがとうございます…!! (5月15日 0時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - 恋心の利用は辛いですよね…この小説本当に感情移入ができるのが良すぎて泣きそうです… (5月14日 23時) (レス) @page36 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆず塩さん» ひゃああ!ありがとうございます!!!😭 (5月10日 23時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - めっちゃウズウズしますね🥰最高すぎます!! (5月10日 22時) (レス) id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:yu→ru | 作成日時:2023年5月4日 23時

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