壱話 ページ1
「貴方、貴方!」
母親と思わしき女が、赤子を抱いた男の腕にしがみ付く。
「そんな、小さい子を連れて行こうだなんて気がおかしいわ、そんなこと今すぐにやめてちょうだい…!」
彼らの所有物には目から滴り落ちる涙の模様が縫われている。
そう、彼らはシーカー族である。
シーカー族は代々王家に仕えてきた一族であり、厄災ガノンを打ち倒す為数多の技術を捧げてきた。
「もう、散々だ…!何が王家だ、厄災ガノンだ…!結局は戦いに持ち込む為の兵器を作らされているだけではないか!
私は、そんな事の為に技術を捧げたくはない!!」
男は赤子をぎゅっと抱きしめ、離そうとはしなかった。
「でも、貴方がいなくなればシーカー族の統率がとれなくなる、貴方の知能を皆頼りにしているのよ…?!」
「だからなんだ、結局は私がいないと兵器作りなどできぬ人材に過ぎぬ…私がいなくなれば、兵器は作られなくなるのだろう?」
「厄災が!!!」
女は叫んだ。
「厄災が復活してしまえば、貴方だって、グレイだって無事ではいられない…わかっているでしょう…?」
「あぁ。だが、それは私の役目ではない。なんとでも言え、私は私の任務から逃げたのだ。王家に仕えているから、イーガ団にも狙われるのだ…!私が狙われたのはこれで何度目だ、言ってみろ」
「…10度目よ」
「私は、私の力で今日まで生きてきた。…もう、こんなところにはいたくないのだ、わかってくれ、ハリス」
男は王国を立ち去り、自然豊かな山の中に小屋を建て、そこで娘を育てた。
狩を教え、学を学ばせ、知恵をつけさせた。
しかし、シーカー族に伝わる術や剣技などは一切教えなかった。
狩りに使うのも、あくまで一般的な技であり、小刀を使った細やかな術や、札を用いた姿眩ましなど…もとより、魔法や
そうすることしか、父親にはできなかった。
そんな少女は今日、17歳の誕生日を迎えた。
15人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アッキー - 初めまして!スッパ夢見させて頂きました!凄く面白かったです!Twitter(X)もフォローさせて頂きました!アッキー@×OSP&T.K.familyというアカウントなので是非フォローしてくれると幸いです!無理なら構いません。 (11月25日 11時) (レス) @page27 id: 9a164c919b (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆず塩さん» ひえぇ…コメありがとうございます…!! (5月15日 0時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - 恋心の利用は辛いですよね…この小説本当に感情移入ができるのが良すぎて泣きそうです… (5月14日 23時) (レス) @page36 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
yu→ru(プロフ) - ゆず塩さん» ひゃああ!ありがとうございます!!!😭 (5月10日 23時) (レス) id: 27c5cead5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - めっちゃウズウズしますね🥰最高すぎます!! (5月10日 22時) (レス) id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yu→ru | 作成日時:2023年5月4日 23時