ＯＮＬＹ［HS］ (ページ10)

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メイクを終えてスタンバイまで椅子に座りながら資料に目を通していると、Aが隣に座った。

「…」

普段から二人でいる時はベラベラ喋る方ではないが、いつもと少しだけ様子の違うA。

YG「何かあった？」

「何もありませんよ」

YG「そうか」

スッと距離を詰めて俺の肩に頭を預けるA。

「ユンギオッパの隣はいつも静かで落ち着きますね」

YG「周りがうるさいからな」

「ふふ、そんなこと言って、あとで文句言われますよ」

話してみればいつも通りに聞こえるAの声に少しだけ安堵する。
カムバの初日だ。いろいろ思うことはあるだろう。

YG「緊張してるか？」

「…少し」

YG「お前なら大丈夫だろ」

「ユンギオッパに言われると大丈夫な気がしてきますね」

YG「それならよかった、と言いたいところだが、安心したいなら俺じゃなくてホソガの所に行った方がいいんじゃないのか」

Aが不安に思うのはいつだってダンスのことだ。
きっと、歌で周りと違うのは仕方ない、と思えても、得意なダンスで一人だけ浮くことは許されないと思っているから。
だからダンスレッスンやリハーサルの時はいつもホソガのところに行って確認するのだ。

「ユンギオッパの言葉でも安心できますよ。メンバーのみんなが私を信じてくれてることが、一番の自信になります」

YG「そうか」

不安に思うことがあってもいい。
ただ、大丈夫と信じて、何よりステージを楽しんでほしい。

YG「楽しもうな」

そう声をかけると、はいっ！と威勢よく返事をしたAに今度こそ安堵して、また資料に目を落とした。