* ページ8
あれから、luzくんに手を引かれ、やって来たのは自室と思われる部屋。
そして私は、部屋を見渡す暇も、さっきの端麗な顔立ちの人の名前を知る暇もない程の状況に立たされていた。
カーペットの上にあるテーブルを挟んでluzくんと向き合っている。
これだけなら平気なのだが先程従兄弟と名乗った彼。つまりは、依存癖持ちだということになる。
これは私のイメージなのだが依存癖というような他人のことを好きな人って小さな変化に気付くはず。
トリップしたとか知られるのは抵抗があるし何よりめんどくさい。
どうやって誤魔化すか……。
「……今日、外に出てから様子変やったね」
背筋が凍りそう。
甘い柔らかい声の中に少しだけ冷えきった響き。
ひんやりとしたものが頬を伝う。
その様子を見たluzくんはほんの少し表情を緩めた。
「ああ、怖がって欲しいわけちゃうんよ、ただいつもより静かやなぁって」
つまりいつもの、私はもう少し賑やかだと。
話題の中心にいるってことになるのかな?
なんて、この状況から目を逸らすために必死に別のことを考える。
luzくんの薄い紫――薄藤色の瞳は何処か冷たさを帯びていて思わず俯く。
言い訳なんて思い浮かばないしもう自室にいるんだし寝たくなってきた。
「A……?」
「えっ? ……ごめん」
ほんとにうつらうつらとして話が聞こえていなかった。
あれ、これ口実に使える?
変な考えが思い浮かぶけど何も言わないよりかはマシだと思って口を開く。
「……事故にあって、気が動転してた。今ちょっと眠いのも理由にあると思う、心配かけてごめんね」
手を合わせて少しだけ頭を下げれば上から安心したような笑い声が聞こえた。
恐る恐る顔を上げると、さっきまでの面影はどこにもない優しげな表情のluzくんがいた。
「よかったぁ、俺こそ疑っちゃってごめんなぁ」
眠いやろ?もう寝てええよ、とluzくんが笑顔を浮かべて言うのでその言葉に甘えてピンクとオレンジが目立つ淡い色のベッドに潜り込んだ。
「ありがとね、luzくん。おやすみなさい」
「……ん、おやすみ」
ふわりと微笑んだluzくんは私の髪を撫でて部屋を出ていった。
ああそういえば、さっきの高身長で私を抱き締めてた人、誰なんだろ。すごい綺麗な人だったけどなぁ。明日会えば分かるか。
布団の温かさに包まれて微睡みに落ちていった。
「いつかは、真実話してな……」
131人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2020年1月21日 7時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ