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「…あ、Aさん！こっち来てくれたんすね」
ぼそりと呟いた彼の独り言は気にしないようにして、話しかけてくれたきりやんさんに笑顔でお辞儀をする。というか顔赤いけど大丈夫かこの人。控えめにお水を渡せば礼を言って飲んでくれた。
「やんさんまだまだ俺話し足んないっすよ〜〜、」
さっきの不機嫌を悟られないようにまた笑顔できりやんさんと接するぐっち。二人は他愛もない話を始めてよく分からないところで爆笑する、という流れを再開した。が、行動には十分不機嫌が現れていた。
「…ぐっち？」
彼は皆に分からないようテーブルの下で、私の手を取り自分の手と繋いでくるという暴動を起こした。それだけならまだ良かったものの、私が名前を呼ぶとあえて意地悪するように指を絡ませて所謂恋人繋ぎ、というものまでしてきた。彼は何も答えない。向かいに座るきりやんさんを見ても、ただぐっちと楽しくおしゃべりしているだけで一向に気づく気配がない。
饒舌にトークをしながら時折不規則にきゅ、と握られるそれに、嫌々ながら器用だなと感心してしまう。自分よりも一回り、いや二回り大きい手にほんの少し心が動かされそうになった時、
「おいてめぇ許さんからな」
救世主たらこが来た。たらこさんは私とぐっちの間に無理やり移動してきて繋いでいた手を振りほどく。ぐっちは割り込んできたたらこさんの横腹に軽く拳を一発入れて前に向き直った。たらこさんは「は？痛、」とぐっちをしばらく睨んでいたが、やがて私の方を向いて、褒めろと言わんばかりにこっちを見てきた。
仕方ない、助かったのは事実だし。そう思い、たらこさんの頭に手を伸ばしよしよしと撫でれば彼は目を見開いた。
「そういうとこマジでズルいわ、」
いつも余裕そうにからかってくる癖に、私から行動を起こすと口元を手で覆い俯いてしまう彼が面白くて、「ちょっとよく分かんないですね、」ととぼけた振りをした。「カウンター食らった〜〜…」なんて言っては小突いてくる彼をまた叱りながらグラスに残っていたお酒を飲み干せば、宴会もそろそろ終わるようだった。
***
「じゃあ今日はこれにてお開きということで。お疲れ様でした！」
最初と同じようにNakamuさんとぐっちが終わりの挨拶をして、お互いにお辞儀をしあい宴会は終了。色々あったけど、なんだかんだ想像以上に楽しかったなぁ。荷物をまとめ店を出ようとすると、どこからか肩を叩かれた。
「あの…Aさん。ちょっと良いですか？」
続く (更新停止中)
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作者名：秋 | 作成日時：2022年11月23日 1時
