縁組カプリッチョ

第三十三楽章 ページ41

「あつっ」

勢いよくタラを食べようとしたら熱くて、わあ絶対口の中火傷したよっ

水を取ろうとするも妙に距離がある

「ほれ」

柳田さんが取ってくれたのを一気に流していく

落ち着いて、もう1くち口に含む


「っこれ水ですか？」

味が…火傷しておかしくなった？
明らかに水とは思えない痺れさせるような辛味がする
見た目は水となんら変わらないけど

「水じゃろ」


「それ俺のジントニックじゃない？」

それを聞いて柳田さんが私の持っているジョッキを取り1口飲んだ

「わ、ほんまや」


「お酒…？」


「それ結構強い酒だよ、葵香ってアルコールアレルギーってわけじゃないよね？」


「アレルギーってわけではないです、」


晃さんのお気遣いに有難く思いながらも…
やばい、帰られるかな…と一気に心配になる。


なぜ私がお酒を頑なに飲まないかと言うと…
寝てしまうのだ。

初めて飲んだ時、1缶で次の日の12時まで寝てしまい、それから飲まないようにしている。


だから、今の状況はまずい。

ほぼそのジントニックというやつを飲んでしまった。


・


・



「あおー立てる？」

顔に熱が集中しているけど体は寒いくらいだ

そして、壁がいい具合にフィットしている
私、寝てたのか…


「タクシー呼びます？」

「そうじゃな」

「みず…」

「はい、水」


少し意識がはっきりして、

たぶん屋上に私はいる。


あれ…私もしかして柳田さんによしかかってない？


柳田さんの左腕が後ろから抱き締めているように回っていて、右手で水を飲まされている気がする


晃さんもいたはずなのに、気づけばいなくて


「あの、わたし」

「酔い覚めた？」


酔っている感が抜けていなければ、今これがどんな状況か考えられないくらいには朦朧している。

けど、これ以上迷惑をかけてはいけないと、理性が働いている


「すぃま、せん」

「いやあ、俺が悪いけん」


屋上の中心にぽつんとある背もたれのないベンチ
柳田さんが支えてくれているのがどうにもうまくはまっていて…心地いいとまで感じる。


あー…気を抜けば、今すぐにでもまた目を閉じてしまいそうだ




「あお、タクシー来たって」


「ん…」


柳田さんの顔を見ながら、たぶん半分…いや9割寝ていたと思う


私の熱でもあるのではと思わせる暑すぎる顔に冷たい手が触れ、



唇にも何かが触れたのだ




目を開けると、目の前には柳田さんの整った顔が見える



えっ



柳田さんは私の体の

酔いを吸い取るように、長いキスをした

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