届 い て い る ん で す ね 。

決断 ページ23

1軍に合流する前の日一足早く札幌にきていた


「話ってなに？」


1年少し付き合っている彼女


「別れてほしい」


「そんな気はしてたんだ」


決して怒ることなく彼女らしくいつもと同じように言った


「あたしが1番じゃなくなったって…
いや野球が1番なのは知ってるよ？そうじゃなくてね…」


「ごめん」


「ううん、いいの。覚悟してたから。
ずっと応援してるよ」


「ありがとう」


理解力があるとはずっと思ってたけど


シーズン中の俺に負担がかからないようにって思ってくれてるのかも


「じゃあね」


「…幸せになれよ」


「…随分上からね〜。直こそー」


俺のことなんて忘れて幸せになってほしい。





あおのことを知ってから


運命ってこういうことを言うのかなって



どこに座っていても、見つけられる



思いもかけずに俺の目に写った女の子がまさかあおだったなんて


好きって言葉が合っているのか不安だけど間違いなく特別な存在




札幌ドームでの登板


同じ席ではないけど見つけられるよ



今日は平日だから制服だね


いつも化粧してるみたいだけどすっぴんの方が自然な感じでいいと思う



6回無失点ピッチング




ボールになんか書こうかな


あおが取れなくてもいいような…


ただいま。うーん普通だな


ってか来すぎ笑


こんなんでいいか！


本当は2年近く待っててくれてありがとうとか書きたいけど


今日は1塁側だけど最後の1球。


あお見てるな、よし。


「(今日もありがとう！ただいま！)」って言ってみたけど…


わかるわけないか…


「(あおのこといつも見えてるよ！)」


だめか…


あおをこれでもかってくらいに指を差す


「(絶対取って！)」


あおに向かって投げたボールはあおの手に収まった


我ながらナイスコントロール


硬式だけど痛くなかったかな…




それからしばらくあおに会うことはなかった


試合では何度か見かけるけどそれくらい


普通そうだよな…


話せるわけないし、せめて連絡先くらい知っていたら世界変わるのに



9月にもなってシーズンも終盤


中1日の休みだった



「寮の前誰かいない？」


「…」

遠くから見るとそれが誰かは大体わからないのに


あれは…あおかもしれない


「俺の知り合いだわたぶん」


「そうなの？」


「たぶん」


「先入ってて」


「おーけー」


近づくと確信に変わった



「 やっぱり 」


顔が少し火照っているあおがいた

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