縁組カプリース

第七十四楽章 ページ32

私が沖縄に来て、6日目。福岡ソフトバンクホークスは9月16日埼玉西武ライオンズ戦に勝利し、通算20回目2年ぶりとなるリーグ優勝を達成した。


途中からだけど、テレビで観ることができた。
真剣に見てしまって全然仕事が進まなかった。


「おめでとうございます」

誰にとか、そういうのではなく思わず口に出しテレビに向かってお辞儀していた。

優勝するとは思っていたけど、いざすると実感がない。
いや、当然か。知っている方たちとはいえ本来は遠い存在なのだ。


ただ、できるのならその場にいて目の前で優勝を見て、興奮気味にお話聞いて徹夜して記事書いてさあ…
また叶えたいことが増えた。


優勝はおめでたい。でも私としては何だか悔しい。あまり試合に出られなかった選手みたいな発言やね。


わたしは、私のやるべきことをやろう。





会ったこともないただ勝手に約束されただけにのに、
無下にできるわけもなく空港から急いで久しぶりの自宅に帰って来た。


簡単に荷解きをして、着替えてヘアメイクを直して30分で家を出た。


待ち合わせって、ここでいいのかな…私のことわかるのかな…？

私は「クリ」というあだ名しか聞かされていない…ゆずちゃに聞いたのに「クリは最高だ、会えばわかる」これしか言ってくれなかった…


そんな心配は一瞬でなくなる





「あおちゃん？」


「…あ、はい」

まって、


「いやあ、本当なんかよくわからない感じですよね〜
マッチングアプリってこんな感じだったりするのかなー」



栗原陵矢じゃん…

ゆずちゃの意図は違えどたしかに、会えばわかった…

数ヶ月前には選手全然分からない！なんて嘆いていたけどもちろん、今は育成選手まで頭に叩き込んでいる

いまベルトコンベアーにひとりずつ選手が流れて来ても名前、出身校などのプロフィールを言える



「お腹空いてる？」


「はい、」


栗原陵矢…私がホークス担当記者になってからは一軍に帯同はなかったな…
そのため、話したこともなければ向こうは私を記者とは知らないはず…


「行きたいとことかある？」


「え、あー…」

ないというと、困るよね…


「ここ！ここ行きたいですっ」

1度お料理教室でデートにいいと思うよと教えてもらったところだ。ここからも近いはず…

「いいね、行こっか！」

にこっと、太陽のような笑顔というのはこういうことかと初めて体現する人を見た

住所確認後、よく行くお店が近いらしくわかるようで完全に頼って歩き出した。

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