最後のONE PIECE (ページ9)

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9 その感情をヒトメボレと呼ぶページ9

歌番組の収録の間、Aの事を考えてた。
目が覚めても、夢を見ていたのかと思った。

君が目の前にいたから、嬉しくて抱き寄せたのに。君は、僕を誤解してる。
僕と君が会ったのは、公園が初めてじゃない。

あれは、僕のソロ活動が決まった日だった。
嬉しいけど、緊張感と不安が入り混じる。
僕が、1人で街を歩くのは滅多にない。
マスクとサングラスじゃ、変装とは呼べない。

だけどその日は、なぜか街を歩いてみたくなった。女の子が、窓越しに僕のポスターを見て、
幸せそうに笑ってる姿。

別にいつもの光景だった。
けど、なんか気になってその子を見てた。
その子の周りの空気が、僕には違って見えた。
空気が違うなんて、ありえないけど。

小さな子供が転ぶ。その子は、
「えらいね。自分で起き上がれるんだ」

手を貸さずに、泣きそうな子供を応援してた。
その子の母親が来て、泣かしたのが
その子のせいかのように叱られる。
じっと、親子が去っていくのを見てる。

「おかあさん」
その子の唇から、こぼれた言葉と涙。

飛び出して行って、君のせいじゃないって、
言ってやればよかったって後悔した。

すぐに、Aは歩きだして、ポケットから、
スマホをだして、イヤホンをつける。
小さく歌ってるのが聞こえた。
僕らの歌 JOJO だった。
この曲って、こんな悲しい曲だったんだ。
Aは公園に入っていった。

あれから、街を歩くと君を探してた。
いるはずもなないし、君は僕を知らないのに。