23 zicoの章4 想い出に 完 ページ23
zicoの歳を知ってる。私より5歳上。
あの人と同じ。だけど、あの人じゃない。
錯覚しそうな自分が怖い。
じっと、その笑顔を見てた。
Live途中から、スクリーンに映ってた
君の泣き顔が、気になって仕方なかった。
もちろん、いつも通りにLiveはこなした。
Liveを終えてから、打ち上げ会に参加する
気分にならなくて、その場を後にした。
東京の夜が好きだ。
のんびりと歩ける安心感もいい。
摩天楼も、高いビルに上がれば
楽しめる事も出来る。
Live会場を出て、公園を横切った。
(誰かが歌ってる。それも俺の)
優しい小さな声だけど、
心に染み込んでくる声だ。
もし、俺が事務所のスカウトなら、
即効だなとか、思いながらその子を見てた。
泣いてたあの子だった。
一緒にハミングしながら、横に座る。
驚いた顔も可愛いかった。
だからといって、下心は別にない。
一般ペンには、手を出さないのが、
俺のポリシーだったから。
だけど、ちょうど時間もあったから、
食事に誘った。
泣いてた理由も気になった。
詳しくは聞かなかったけど、誰にだって、
触れられたくない事はある。
zi「やっと笑った」
気にしてくれてたの？
私の知らない人なのに。
この人は多分、仕事柄、
色んな世界を見てきたんだろうな。
私とは見てきた、経験した事が違いすぎる。
今、この人と同じ時間を、共有している事は
奇跡なんだなと解ってる。
いつまでも先に進めない私に、
きっと神様がもしもいるのなら、
もういいんだよって、
肩を押してくれた出来事なんだと気づいた。
私の思い出の中で、
あの人はずっとあの頃のまま。
A「あの、ジホさん、今日は本当に
ありがとうございました。
なんかスッキリしました」
優しい目が、Aの言葉を聞いてる。
zi「またどこかで会えるといいね」
A「はい、ずっとファンでいます」
Aのスマホの中に、また１枚宝物が増えた。
笑顔で笑うジホにもたれて、写した自撮り写真。
ねぇ、私も笑えるんだよ。
もう泣き虫じゃないんだよ。
夢の中に、出てくるあの人はいつの間にか、
ジホさんになっていった。
私の思い出に、また別のページが増えていく。
fin
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作者名：如月ゆい
| 作成日時：2016年12月7日 20時
