episode3 ページ3
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「雨、だねぇ」
「んとだー」
放課後。支度を終えて、
教室から外を見渡せば
心まで暗くなるような、グレーの雲と
そこから涙のように零れる雨。
しとしとと。
肌色のグラウンドを、焦げ茶に変えていく。
「え、勇太傘ある?」
勇太「その感じだと、Aは持ってないと?」
だって今日、降水確率少なかったじゃん。
なんてスマホの天気予報の画面を
勇太に見せつけると
勇太「ソレ、明日の天気な」
「ん!?」
呆れたような顔で
ばっかじゃん。なんて私の頭をぐしゃってすると
ぷーっと膨らませた私の頬を、
長い指で、潰す。
ぷすー、、、
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窄まった唇から
空気の抜ける音がして、目線をあげると
勇太が楽しそうに笑ってて。
勇太「良いじゃん。相合傘すれば」
「ハイハイ」
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幼馴染みの神宮寺勇太。
中学生の頃からの仲で
イケメンで、優しいから女の子から
凄まじい人気を誇るのに
地味な私といてくれるから
本当に有難い。
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行くぞー。なんて、カバンを
カッコつけて持って
私の前を歩く勇太。
中学生の頃は、私よりちっちゃかったのにな。
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そっと目を閉じて、中学生の勇太を思い出す。
勇太が、初めて仲良くなった男の子だった。
勇太が、初めて話した男の子だった。
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私の男の子との関わりは
全て、勇太が初めてだったはずだった。
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はず、だった。
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そう。それは
私の記憶の中では、の話。
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「 .... 思い出せるわけ、無いか。」
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ハハ、と自虐的に笑って
足元を見つめてみる。
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そう。私には
中学生以前の記憶が
1ミリたりとも。
1マイクロとも。
脳裏に残っていないのだ。
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何故、記憶を無くしたのかは
私にも分からない。
医者には、一時的な記憶障害だろうなどと
納得のいかない理由を媚びり付けられた。
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それは、中学生の春。
私が久しぶりに目覚めたのは
まだ、桜舞う季節の静かな病室だった。
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ヤリチンのゴロリ(プロフ) - 作者さんの作品は全部面白くて、、感情移入しちゃってます( (2017年1月10日 17時) (レス) id: 1504061187 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - とても面白くて続き読むのが楽しくて仕方がないです。なぜ?どうして?と次々と疑問が出て来て読むのをやめさせてくれません!(笑)更新、頑張って下さい! (2016年10月30日 1時) (レス) id: cab08090a2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシノ(プロフ) - いろんな人物が交わってて、こういう設定のお話大好物です!!続きが気になります!廉くんの新作も楽しみにしてます☆更新頑張ってください! (2016年10月23日 23時) (レス) id: 66e54ac751 (このIDを非表示/違反報告)
桃佳(プロフ) - 最高に面白いです!!!続きも全力で楽しみにしてます(*^^*)!!! (2016年10月23日 23時) (レス) id: 179cb3b106 (このIDを非表示/違反報告)
ピョン(プロフ) - とても面白いですよ!この話大好きです!続きが気になるので更新頑張ってください! (2016年10月23日 22時) (レス) id: 92c3e03367 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はう
作成日時:2016年10月14日 20時