真夏の少年~19452020~

第1話＿その五 ページ8

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ホッとしたように笑う奈津子。
やっと開放されたAが今度こそ自転車を漕ぎ始めた。


｢モンスターペアレント………………｣


自分の母親があんな過保護だったら耐えられないだろうな、と考えるだけで寒気がする。
長年あの異常な愛情を注がれて耐え抜いた道史は凄い。


｢どうせ今頃また勉強してんだろーな｣


道史はいつ家に行っても机に向かっている。
そんな彼が疲れてきた頃にアポ無しで部屋に突入し、勉強を邪魔するのがAの役目だ。


｢山田くんに借りたCD返さなきゃ｣


ぶつくさ言いながら屋根裏のソファーにどかっと座った。赤茶の毛が跳ねた雑種の子犬がAの膝の上を占領し、黒猫がそれを阻止しようとする。


｢平和だな…………｣


結局は2匹仲良く膝の上で寝息を立てている姿に頬が緩む。


｢君たちは自由だと思う？｣


返事はないけど、聞いてみたくなった。
刺激的な出来事でもない限り、ありふれた自由に気づくことができないんじゃないかって、時々思うのだ。


｢夏休みになる前にさ、楽しいこと探そうか｣


彼女の言う"楽しいこと"の基準は彼女の気分次第だが、"楽しいこと"は確実に、目前まで迫っていた。









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