第1話_その四 ページ7
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あれから2時間後。
Aはボーッとしながら夕焼けに染まる浜辺を散歩していた。
長い間太陽の光に焼かれた砂が風に煽られて足にかかると、その熱さで我に返る。
「そろそろ帰ろ」
クラスメイトが自 殺を図った。
あまりにも衝撃的すぎて、聞いた当初は耳を疑った。
もしかするとジョークかもしれない。
けどさっき道史も言っていた通り、ドッキリのためにクラスメイトを死んだ事にするのも如何なものかと思う。
……とすると本当に飛び降りた事になる。なら死にたくなる程に彼を追い込んだ原因は一体何なのか。考えれば考えるほど疑問符が次々に浮かんでくる。
「考えんのやめよ」
まあきっと原因はいずれ明かされるだろう。
いつもの呑気思考で同級生飛び降り事件を脳の片隅に追いやった。
「…………あ」
暫く色褪せた電動自転車を漕いでいると、見覚えのある顔と出会った。
その女性の凛々しい光の宿る目と、Aの気だるげな目がパチリと合う。
うわバレた、と内心顔を顰めながらも、挨拶がてら軽く会釈をすると、向こうもにこやかに微笑んだ。
「あらAちゃん。こんな時間に何処へ?」
眼鏡をかけたその人は柴山奈津子。道史の母親だ。
「…………海辺で散歩」
「ふふ、海が大好きなのは小さい頃から変わってないわね」
「はは、、」
引き攣った苦笑いを浮かべても、彼女はニコニコしている。
奈津子はとんでもない毒親で、道史を理想の息子にしたいという気持ちが誰よりも強かった。
それ故に道史は、母の期待に応えようと無理をしているのだ。彼が密かに『見掛け倒しトリオ』に憧れているのをAは知っている。
成績優秀なうえ容姿もなかなかに整っている少女は息子の幼なじみ。
仲良くして害はないと判断したのか、何故かAは奈津子に好かれている。
「あのぅ、Aちゃん」
「何ですか?」
2度目の会釈をして通り過ぎようとしたAを、奈津子はまだ引き止めた。
「何だか物騒な事があったみたいで、大丈夫かなって心配で」
「物騒…………あー、」
財前の飛び降り自 殺の件だろう。
彼女が言う 「大丈夫かな」 は勿論、息子に向けられた言葉だ。
「柴ya……道史なら心配いらないと思いますよ」
「ほんと?なら安心だわ。ありがとう」
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ん - ナッちゃんってあだ名読者が読みやすいようにこのあだ名も変換できたほうがいいと思います (2020年10月3日 3時) (レス) id: 9a687a3599 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 真夏の少年待ってました!めっちゃキャラいいですね!!那須くんとの絡みが少ないものが多かったので嬉しいです! (2020年8月7日 2時) (レス) id: 8da083b7de (このIDを非表示/違反報告)
さら - はじめまして!!真夏の少年書いてくれて嬉しいです!!私も落ちはひだか君がいいです!! (2020年8月1日 19時) (レス) id: 8178d9f7d8 (このIDを非表示/違反報告)
ayu(プロフ) - はじめまして!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2020年8月1日 15時) (レス) id: 3c6e877405 (このIDを非表示/違反報告)
姫 - 今日から始まりましたねオチは私的に飛貴くんがいいです (2020年8月1日 0時) (レス) id: 1c8b5a85be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だいふくリンゴ☆ | 作成日時:2020年7月29日 19時