第4話_その十 ページ45
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撫でられた子猫は嬉しそうに伸びをしている。
「Aは誰よりも優しい子だ。この猫だって安心しきってる」
子猫はさっきAの手から渡されたたい焼きの欠片を、なんの躊躇もなく口に入れた。それがAを信頼している何よりの証拠だ。
「居なくならないと言ったお父さんが居なくなって、Aは何を信じていいか分からなくなったんだ。そうだろ?」
何も言わずに頷くA。
三平の言葉はそこらの他人が言う言葉なんかよりずっと強くAの心に響いていた。
「嘘をつかれて周りを信じられなくなっても、
自分にだけは嘘をついたらいかん。Aは優しくて明るい子だ。それを隠す必要はない」
「………………」
『Aは優しいなあ!』
いつかの父の言葉と情景が重なって、Aの目から自然と涙が零れた。
驚いた子猫が涙で濡れた頬をペロペロ舐めている。
「Aを見てると娘を思い出すんだ。
可愛くて純粋で素直で…Aによう似とった。」
「娘さん、死んじゃったの?」
「俺は生きてると信じとる。
悟たちがな、花火大会の日に会わせてくれるって言ってるんだが……本当に大丈夫かな」
「ふ、無理ゲーでしょ。地球上にどんだけ人いると思ってんの」
涙は枯れて、ほんの少しだけ前向きになれた気がする。
過去に囚われてばかりじゃダメだ。今の自分と向き合おう。そして願わくば、花火を笑顔で見られるようになろう。
花火は父を奪ったものではなく、父がAに笑いかけてくれているものだって思える日が来るように。
「ありがとうミヒラさん。柴山たちにもお礼言っとかなきゃね。
……さてと、春日くんをどう締めるか(小声)」
他愛もない話をしながら秘密基地に戻る。
キイ、とその扉を開けた時。明彦が血相を変えて掴みかかってきた。
「花火大会が…………中止になったって!」
「……………………え?」
To continue…
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ん - ナッちゃんってあだ名読者が読みやすいようにこのあだ名も変換できたほうがいいと思います (2020年10月3日 3時) (レス) id: 9a687a3599 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 真夏の少年待ってました!めっちゃキャラいいですね!!那須くんとの絡みが少ないものが多かったので嬉しいです! (2020年8月7日 2時) (レス) id: 8da083b7de (このIDを非表示/違反報告)
さら - はじめまして!!真夏の少年書いてくれて嬉しいです!!私も落ちはひだか君がいいです!! (2020年8月1日 19時) (レス) id: 8178d9f7d8 (このIDを非表示/違反報告)
ayu(プロフ) - はじめまして!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2020年8月1日 15時) (レス) id: 3c6e877405 (このIDを非表示/違反報告)
姫 - 今日から始まりましたねオチは私的に飛貴くんがいいです (2020年8月1日 0時) (レス) id: 1c8b5a85be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だいふくリンゴ☆ | 作成日時:2020年7月29日 19時