真夏の少年~19452020~

第3話＿その八 ページ34

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どうやら秘密基地は夜中まで使われているらしい。家に帰らなくていいのかと聞いたら全員が｢別にいい｣と答えた。


｢姐さんも居なよ！｣

｢え、いいよ別に｣

｢どうせ家帰っても寝るしかねえんだろ？｣


いーじゃねえかよ、と引っ張られて今夜は夜更かしすることにした。…と言っても特に何もすることなく、ぼーっと天井を眺めている。


すると、ピロンと誰かのスマホが鳴った。


｢あれ？なんか動画来た｣


悟がポケットからスマホを取り出す。
メールの送り人は不明。送られてきた動画とともに、道史に見せろと三平からのメッセージも付いている。誰かにスマホを借りて送ったのだろうか。
道史を呼び、全員集まったところでサムネイルをタップすると、画面いっぱいに三平が映し出された。


『道史くんへ。道史くん、あなたのお母さんは、慶明高校の生徒のお母さんに頭を下げて問題集を貰って……』

｢え……？｣

『解答欄の解答を消しゴムで消して、一枚一枚写真を撮って、問題集を完成させました！』


タブレットに入っているGeniusの端に消しゴムで消した跡が残っていることに、少し前に気づいた道史。その消し跡には、こんな理由があったのだ。

長い間"毒母"だと嫌ってきた奈津子だが、毒親なんかじゃなかった。
息子のために他人に頭を下げて問題集を貰い、びっしりと書かれた解答を綺麗に消し、1枚ずつタブレットで写真を撮る。
ただの毒母だったらこんなことしないはずだ。

そんな母の姿が脳裏に浮かんできて、道史の目元がじわじわと熱くなってくる。


『これがその証でーす！』


丸くなった消しゴムが映される。
とうとう堪えきれなかった涙が、道史の頬を伝った。


『最後に一言！
貴方のお母さん見てると、無性に娘に会いたくなりました！以上！三平三平がお届けしました！』









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