## ページ25
-
“どうか難破くんの頑張りが報われますように”
そんな祈りを捧げたも束の間。幸運にも、ひとつめの問題が解決したのはそれからすぐのことだった。
「とりあえずはよかったな。アイツまた白百合通えるぜ」
わたしと直樹くんが猛さんに話しに行っている間、大丸くんは白百合に行っていたらしく。なんとそこで、驚きの光景を目にしたんだと言う。
藤田さんを初めとした難破くんのクラスメイトや弥生ちゃん、他の生徒のみんなが体育館に立て篭もって、難破くんの退学撤回を要求したんだって。立て篭もりに参加しなかった生徒も先生たちも授業そっちのけで体育館の周りに集まって、難破くんを白百合に取り戻そうと抗議し続けたって。
その結果、難破くんは退学じゃなく停学に。もちろん停学が明けたらまた白百合で高校生活を送れるようになった。
退学撤回を経て、漸く部屋から出てきた難破くんはげっそりしていて。今はそんな彼と向かい合う藤田さんの様子を、少し離れたところから見守っているところです。
「……白百合には戻れないよ」
藤田さんは嬉しそうなダブルピースで難破くんが退学でなくなったことを宣言したけど、難破くんは、弱々しい声でそう言った。その声や表情には今までの覇気はとてもなくて。「なんで？」とでも言いたげな藤田さんに、彼は小さく首を振る。
「俺のせいでみんながあんな目に遭って……どんな顔して戻ればいいかわかんない」
「……なんでそんなこと言うの？私たちみんな、難破くんが好きで、白百合にいて欲しいって思ったから頑張ったんだよ」
いち生徒の退学撤回を求めて体育館に籠城するなんて、先生たちはそんなことした生徒を黙って見過ごしはしないだろう。内申点に大きく響くし、藤田さんたちは受験生だ。最悪、大学への推薦を取り消すとか言われてもおかしくなかったはず。
それなのに立て篭もりを強行した理由は、難破くんへの気持ち以外の何物でもない。難破くんが意味のない喧嘩はしないこと、大切な白百合を守るために立ち向かったんだってみんな分かってる、と。藤田さんは眉を下げて言った。
「一緒に卒業しよ……ね？」
最後の最後に背中を押すのは、やっぱりわたしたちじゃ役不足だった。クラスメイトとして、同じ目線に立つ藤田さんだからこそできる。固く引き結ばれていた難破くんの口元が、ほんの少し緩んだような気がした。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リュウ - 続編楽しみに待ってます!! (12月19日 11時) (
レス) @page33 id: 6792b0e39f (このIDを非表示/違反報告)
mie - 本当に面白かったです！毎日更新を楽しみに、わくわくしながら最後まで読ませて頂きました！続編も楽しみにしています！応援しています◎ (12月19日 1時) (レス) @page33 id: b7654c3b50 (このIDを非表示/違反報告)
わーい(プロフ) - 初めまして、いつも素敵なお話をありがとうございます！そして続編…とても楽しみにしていた作品なのですごく嬉しいです！無理せずお身体に気をつけてくださいね(><) (12月18日 13時) (レス) id: 5c007e6399 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年12月4日 9時
