## ページ24
-
どうやら、猛さんの態度に憤ったのはわたしだけじゃなかったようで。何も言わずに早足でずんずん歩いてた直樹くんは、振り返っても猛さんの姿が見えなくなったあたりでその足を止めた。
「………………よくやった」
「へっ？！」
別にわたしが怒られてるわけでもないのに何だか怖くて縮こまっていると、すっと伸びてきた大きな手がわしゃわしゃと頭を撫でてくるから。訳も分からず目をまるくさせたわたしは、ぽかんと彼を見上げることしかできなかった。
「お前さ、前も思ったったけど、ここぞって時は割とズバッと言うよな」
「そうですかね……？」
「ん。見ててスカッとしたわ」
わたしだって、自分があんな大声出して怒鳴ったり、怒りに任せて人ぶん殴るよう奴だなんて思ってもみなかった。
……いや、そもそもそういうタイプじゃなかったと思う。でもこうなったのは、きっと市松に入って色んな人と知り合ったから。大切なものがたくさんできて、関わっていくうちに、少しづつ変わっていったんだろう。
「あの、猛さん……大丈夫でしょうか。思ってたより強めにいっちゃいましたけど」
何とも言えないもどかしさを誤魔化すように、まだヒリヒリする手を開いたり閉じたりしてみる。気持ちが赴くままに思いっきり振り抜いてしまって、思いのほか勢いが強くなっちゃった。今になってから、なんであんなことしたんだと後悔しつつあります。
「あー……手型は残るんじゃね？」
「って、テガタ？！」
「ビビりすぎだろ」
悪党ぶん殴るのに心は痛まないって言ったけど、猛さんは別に根っからの悪党じゃない。そんな人様の顔面に手型つくくらいビンタしちゃったなんて。
さーっと青ざめていくわたしの顔を見てケラケラ笑った直樹くん。「やっぱお前はそうでねーと」と手のひらに軽くキスをして、今度は真っ赤になるわたしを見て言った。
「あのふたり、仲直りできるといいな」
退学のことも、猛さんのことも。わたしたちにできることは最大限やったつもりだ。あとは事がどう流れていくかに身を任せるしかない。
今までの難破くんの頑張りが、どうか報われますようにと。わたしは心の底から祈っていた。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リュウ - 続編楽しみに待ってます!! (12月19日 11時) (
レス) @page33 id: 6792b0e39f (このIDを非表示/違反報告)
mie - 本当に面白かったです！毎日更新を楽しみに、わくわくしながら最後まで読ませて頂きました！続編も楽しみにしています！応援しています◎ (12月19日 1時) (レス) @page33 id: b7654c3b50 (このIDを非表示/違反報告)
わーい(プロフ) - 初めまして、いつも素敵なお話をありがとうございます！そして続編…とても楽しみにしていた作品なのですごく嬉しいです！無理せずお身体に気をつけてくださいね(><) (12月18日 13時) (レス) id: 5c007e6399 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年12月4日 9時
