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そういうわけで。弥生ちゃんと吟子ちゃんが難破くんの秘密を知り、二重生活の協力者が増えた。ここで終わっちゃうんじゃないかって気が気でなかったけど、とりあえずはひと安心だ。
「脱･胃薬」
「お前ここ最近でどんだけ飲んだよ」
「だいたい20錠」
「死ぬぞ」
ぎょっとしたような直樹くんにドン引かれる。確かに、このまま修羅場が続けばオーバードーズで死ぬところでした。それに胃薬がなくとも、ストレスに耐えきれなくて舌噛んで、どのみち辿る運命は同じだったと思う。
ちなみにツボ押しの件は、あのあと大丸くんにやってもらおうと思ったけど力強すぎて普通に手のひら貫通しかけたので二度とやらないって誓いました。
「おーーーーーーーいねえさぁあああああん！！」
「うわっ？！」
その時、後ろから大声でわたしを呼ぶ声がしたかと思うと、振り返るよりも速く、とんでもない勢いで突っ込んできた“何か”に吹っ飛ばされた。
足元が狂って倒れそうになったところを余裕げな直樹くんに受け止められて、目を白黒させながら見上げた先には、ニッと笑う吟子ちゃんがいた。
「おはよ！ふたりで登校？仲良いねぇ！」
「吟子ちゃんは朝から元気…………だ、ね、」
朝からハイテンションで絡んできたのは吟子ちゃん……だけど、その姿はいつもとは違う。
わたしがびっくりして言葉をなくす傍らで、こちらも驚いて目をぱちぱちさせた直樹くんが言った。
「吟子お前、その頭どうした」
「染めた」
「「それは見たらわかる」」
思わずふたりで声を揃えると、「おお〜ハモった！」なんてノリノリな吟子ちゃん。彼女はつい昨日まで、金のメッシュが入った黒髪を靡かせて、リボンはつけずに折りまくったスカートにピンクのカーディガンを着ていたはずだ。
それなのに、いま目の前にいる吟子ちゃんは真っ黒の髪を低い位置でふたつに結んで、スカートは膝丈、リボンをつけてブレザーまで羽織っている。ど、どういう風の吹き回し？
「あたしが不良じゃ兄ちゃんの評判まで下がるだろ？ほら、兄ちゃん生徒会長だからさ」
そう言ってドヤ顔の吟子ちゃん。どうやら難破くんの件を自分なりに受け止めて、そのうえで完全に吹っ切れたようだ。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
