## ページ50
-
「あ、やっと笑ったな」
ふと見ると、直樹くんの絵に難破くんも笑っていて。大丸くんに言われた難破くんは慌てて真顔に戻ってしまう。彼自身、家族のことで悩んでいて、とても笑える状況じゃないのは分かるけど。
「難破、俺らには気遣わなくていいからよ。できることあったらなんでも言えよ」
「難破くんの気持ちを代わってあげることはできませんし…だからせめてちょっとでも楽しくいられるように、わたしら頑張りますから」
「大丸、姉崎…………」
これ以上、嘘を重ねる必要はない。寧ろわたしたちの前では、いつも偽りのない本当の姿を見せてくれていたじゃない。だから嬉しい時は嬉しいって、素直に笑ってほしいな。
だってわたしたちはその……親友だから。
「まだ頭ん中ごちゃごちゃしてんだろうけどよ、そろそろ顔上げねえと夏休みなんてあっという間に終わっちまうぞ」
……そう。夏休みはまだ始まったばっかりなんだから。これから卒業してそれぞれの進路に出たら、こうやって4人で集まる機会も減るだろうし。遊ぶなら今のうちだ。花火だって見なきゃだしね。
「お前いいこと言うなぁ。こんな……っ、こんな絵描いてるやつが言うこととは思えねえよなあ！」
「しつけえんだよ！」
「お前やばいぞこれ？なぁ姉御」
「個展でも出しますか」
「なんでノリノリなんだよお前も！」
ぺいっ、と渾身のデコピンを食らって呻く。難破くんは今度こそ、心から楽しそうに笑っていた。
知り合ったばかりの頃はただただ怖かった。関わりたくなくて、知ろうともせずに遠ざけていた。
……でも、彼らはそんなんじゃなかった。
その優しさと温かさに触れるうちにいつしか人見知りも忘れて、本気で笑って、本気で怒って、本気で泣いて、本気で悩んで、本気でふざけて。
気づけば遠ざけるどころか、卒業して会えなくなるのが惜しくなっていた。
だから今はめいっぱい、この青い春を謳歌したいと思った。
……まあ、夏だけどね。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リュウ - 毎日更新ありがとうございます。毎日チェックしてます！これからも更新お願いします！ (11月28日 2時) (
レス) @page8 id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
