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猛さんに難破くんの秘密がバレてから、1週間が経過した。
「あの野郎、いつまで落ちてるつもりだ？」
「うち来てからずっとあの調子だ」
難破くんはあの後家に帰って、両親にも白百合に通っていることを打ち明けたのだという。そこで口論になって、「こんな家に産んでもらって迷惑だ」と叫んでしまったらしい。
それから家出して、ずっと直樹くんの家に居候している。
わたしと大丸くんとでこうやってちょくちょく覗きに来てはいるけれど、いつになっても難破くんの顔は暗いままだ。
「親子喧嘩って言うつもりない余計なことまで言っちゃって後戻りできなくなるんですよね……」
「意外だな、お前喧嘩とかすんのか」
「そりゃしますよ。授業参観来て欲しくなさすぎて父親と喧嘩になって、最終的に死ねって言ったことあります」
「飛躍しすぎだろ」
ちなみにその時は、愛娘に暴言吐かれたショックで何日も飲まず食わずが続いて本当に死にそうになって。そんなお父さんの姿を見て心が痛んで、泣きながら土下座したんだっけ。
でも授業参観に来るのは断固として拒否したけどね。だっていじめられてたんだもん。
「姉御が暴言吐いてる姿とかよぉ、世界一想像できねえんだけど」
「わたしをなんだと思ってるんですか……」
「聖母？」
「はい？」
確かに、喧嘩は嫌いですけどね。なにせわたしは人見知りなうえに究極の内弁慶なもので。慣れた人には案外砕けた態度を見せるのです。聖母でも女神でも天使でもなくただの外面のいい陰キャですよ。
む、と頬を膨らすと、ケラケラ笑った直樹くんが、ソファーに深くもたれかかりながら言った。
「でもまぁ、“あん時”のAはビッとしてたわ」
「あ？どん時だよ」
「お前が一撃で伸されて寝てた時だよ」
直樹くんが言うのはきっと、猛さんに向かってボロクソ言った時のことだろう。言いたいことは言ったけど、内心申し訳ないな、とは思う。後半はもうただのガキ臭い悪口のオンパレードだったし。
「だよな、難破」
「…………」
「「「…………」」」
同意を求めた直樹くんが難破くんを振り返るけど、彼は相変わらず俯いたままで。どうしたものかと3人で顔を見合せた。
……仕方ない。こんなこともあろうかと、今日はとある物を持ってきたんです。
足元で寛いでいた松を抱えた大丸くんが、ニカッと笑って言った。
「おい難破！今日はいいもん持ってきたぜ！」
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
