帰らせて下さい、切実に。IV【ナンバMG5】 (ページ41)

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掘り下げてみると案の定、難破くんは美術大学への進学を志望しているらしかった。そしてこちらも想像通り、家族になんて説明するかどうかで渋っているのだと。

だったら早いこと本当のことを話した方がいいという結果で、あの場はお開きになった。

……んだけど。

「はぁ？まだ言えてない？明日もう終業式だぜ？！」

それから数週間。夏休みを目前にしても、難破くんは家族のみんなに二重生活のことを言えないままでいた。

ここまでくるとそろそろマズい。こうして進路を決めきれないままズルズル引き摺るわけにもいかないし、早いことハッキリさせなきゃ！……っていっても、きっとそれは難破くんがいちばん分かってるんだろうけど。どうするのが正解かなぁ。

「あのなぁ、美大行くってんならバレるのは確実。だったら早くバラしちまえよ！いつまで家族騙してるつもりだバカ！自分の気持ち正直に言えば分かってくれるよ」

珍しく熱の篭った物言いで直樹くんが言う。彼曰く、「最近のコイツ見てるとイライラすんだよ」らしいけど。それは彼の優しさ以外の何物でもないとわたしは思いますがね。なんやかんや言って、みんな難破くんが心配で、幸せになって欲しいって心から思ってる。

「踏み出すまでは怖くても……大丈夫ですよ。皆さん優しいですから、難破くんの決意を無下にしたりはしませんよ」

「ありがとな。…………うん、なんか、軽くなったわ」

「そうだよな」と。しおらしく頭をかいた難破くんは、真っ直ぐな目で頷いた。

息子や娘に何かいいことがあればまるで自分のことのように、オーバーなくらいに喜んでくれる。そんな暖かくて優しい難破家の皆さんならきっと大丈夫だ。もちろんショックは与えてしまうかもしれないけど、話せばわかってくれるハズだと思うから。

「じゃあ今日は前祝いだ。…………俺が奢る」

「替え玉3つ！」

「餃子も2つ！」

「胡麻団子お願いします！」

「早えな！」

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