帰らせて下さい、切実に。IV【ナンバMG5】 (ページ38)

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ぎょっとするわたしたちに気づかない猛さん。難破くんの正体がバレることを恐れていると、彼はそんな心配などつゆ知らずといった様子で、白百合の校舎へと消えていった。

さすがのわたしたちでも白百合まで入っていくわけにはいかない。どうしようかと慌てていると、吟子ちゃんから着信が入った。

「ぎっ、吟子ちゃん？！いま猛さんが……」

『そうなんだよ！！あたしの忘れ物届けに来てくれたんだけど、これから市松寄って兄ちゃんに会いに行くって……！』

「ええ？！」

『どうしようどうしよう姉さん！なんとかして！』

焦りを含んだ吟子ちゃんの声に、冷や汗が止まらなくなる。
……ど、どうしよう。ここでバレたら今までの努力が全て水の泡だ。吟子ちゃんや弥生ちゃんは理解して受け入れてくれたけど、今回の相手はあの猛さんだ。「何やってんだてめぇ」って難破くんを半殺しにする絵面が簡単に思い浮かんで、スマホを持つ手がガタガタ震える。

「ば、ば、ば……バレたらこ、ころ、ころされ」

「落ち着け。とりあえず上手いこと言って帰ってもらうしかねえよ」

「ぅ、あす……！」

頭は真っ白で顔は真っ青。震えるわたしの背中を撫でた直樹くんは深刻な面持ちで言う。……そうだね。とりあえずわたしたちは猛さんが踏み込んでこないよう、平和に帰さないと。

「これアンタの車？カッケェじゃん」

「ちょうどいいや。お前ら駐禁切られねえように見ててくれ」

程なくして、吟子ちゃんに忘れ物を届け終えた猛さんが白百合から出てきた。そして面倒なことに、うちの1年生たちが彼の車を物珍しそうな顔をして囲んでいる。やばいやばいやばい。

「オッサン、俺らに命令してんじゃねえよ」

そしてあろうことか、空気の読めない1年坊はガンを飛ばしながら猛さんの車に手を伸ばす。その手を掴んで捻り上げた猛さんは、彼を突き飛ばして言い放った。

「お前らに用はねえんだよ。頭呼んでこい」

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